朝ドラの穂高教授が教室に入室する場面

 

NHKの朝ドラ(連続テレビ小説)を毎朝楽しみに視聴しています。ドラマの劇中によく大学教授が登場するので、自分自身の置かれている立場や振る舞いと比較するのも一つの楽しみとなっています。

 

今オンエア中の2024年度上半期の「虎と翼」には明律大学法学部の穂高重親教授が登場します。女性の社会進出に理解があり、主人公の佐田(猪爪)寅子を明律大学女性部入学へと導きます。学者としての風格を持ち合わせつつも、物腰は柔らく、学生想いの優しい紳士という印象です。

 

演じている俳優はベテランの小林薫さん。丸眼鏡がとても似合っていて、彼が演じた数々の役柄のなかでも好感度が高い役柄じゃないでしょうか。

 

主人公・佐田寅子(伊藤沙莉さん)と恩師・穂高重親教授(小林薫さん)

 

私はこの穂高教授のような風格もなければ人格者でもありませんが、それなりに年を取って腰を痛めて着席で講義するあたりは似ています(笑)

 

一方で、決定的に違うと感じた場面がありました。それは教授が教室に入場してくるシーンです。

 

学生たちは全員着席して教授の入場を待ちます。

教授の姿が見えると全員起立して教授を迎えます。

 

創価大学での教室入室時の風景

 

現実の私は全く逆です。今は教室に入ってから授業の準備に時間がかかるので、授業開始15分前には必ず入場するようにしています。その時間に教室にはまだ学生はほとんどいません。現在担当しているある講義科目は受講者80人の中規模クラスですが、先日、教室に入室した際は学生はまだ3人しかいませんでした。

 

 

最後列に1人、窓際に1人、廊下側に1人いたのですが、写真ではうまく編集してカットしました。たまたまこの教室は前の時間が空きコマのため、かなり早く行っても気兼ねなく入室することができます。

 

なぜそんなに早く行くかというと、入室してから以下の準備が必要だからです。

 

1.教卓のPCを起動し(ID, PW入力)、スクリーンを下ろす。起動に少し時間がかかります。

2.準備してきたスライド資料を教卓PCにコピーし、ファイルを開いてスクリーンに映す。

3.ポータルサイトを開いて(ID, PW入力)、授業内で使用するクリッカーとフォーラムの準備をする。

4.オンライン受講者のためにZoomを起動し(ID, PW入力)、授業科目のミーティングルームを開く。カメラを起動し、自分が適正に映るように調整する。スライド資料を画面共有する。

5.教授用ピンマイクとフロア用のハンドマイクを準備する。

 

これだけの作業で10~15分はかかります。幸いティーチングアシスタント(TA)の大学院生がカメラの起動などは手伝ってくれます。準備が早めに終わったときは資料に目を通して静かに頭の整理をします。

 

限られた90分を最大限に活かして授業を行うには15分前に入室して準備を始めないと間に合わないのです。そして、準備をしている最中にどんどん学生が入ってきます。「おはようございます!」と挨拶をくれる学生もいます。だんだん人が集まって授業らしい雰囲気になった頃にチャイムが鳴っていよいよ授業開始です。

 

しかし、ドラマのような昭和初期はもとより、私が大学生だった昭和50年代でさえ今のような教育機器やコンピューター環境は整っていませんでしたから、これは時代の変遷というしかありません。便利になった分、授業の効率は上がっているように思うし、また、そうでなければ意味がありません。

 

ドラマのように学生たちに起立して迎えてほしいとは思いません。学生のために奉仕することが大学教員の使命ですから格好にとらわれる必要はないと思っています。

 

山科出身の同郷の俳優・小林薫さん

 

話は変わりますが、穂高教授を演じる俳優・小林薫さんには特別な親近感があります。というのも、彼は私と同郷の京都市山科区の出身だからです。年齢はひと回り近く彼の方が上なのですが。

 

 

京都市山科区出身の著名人というと、俳優の近藤正臣さん、お笑いコンビオセロの中島知子さん、サッカー元日本代表の松井大輔さんなどが思い浮かびます。小林さん、近藤さん、中島さんは山科区内の府立洛東高校の出身でもあります。

 

私は中学校から東京へ出たので、山科は子どもの頃の思い出しかないのですが、まだ田んぼが多かった当時の田舎の風景や、天智天皇陵、毘沙門堂、大石神社、琵琶湖疏水などの懐かしい風景が心に沁みついていて、ああ小林薫さんもこの風景を見て育ったのかと思うだけでものすごい親近感を覚えます。

 

小林薫さんも近藤正臣さんもそうですが、普段俳優として標準語を使いこなしておられていても、どこか言葉の響きに京都人らしい柔らかさを感じます。

 

そう言えば先日の日本語学会のワークショップで研究発表した際、ポライトネスの解釈には地域差もあるのではないかというコメントを東北大学の大学院生の方からいただきました。京都の人は他地域の人より過剰に配慮して裏表があると思われるのではとのご指摘に思わず苦笑してしまいましたが、これは本当にそうなんだろうと思います。

 

他地域の方には迷惑をかけているかもしれませんが(笑)、京都人は京都人どうしの会話がとても心地よいものです。