私は1992年に創価大学文学部に着任し、講師5年、助教授7年を経て2004年4月に創価大学文学部教授を拝命しました。そして、本年(2024年)4月に早いもので教授就任から満20周年を迎えました。

 

この間、多くの方にお世話になりました。またさまざまにご迷惑をかけたことも思い起こします。この20年の感謝を中心に振り返ってみたいと思います。

 

2度の海外長期滞在

 

2004年は教授就任早々、在外研究を模索しました。言語学者としてのライフワークを形成するうえでどうしても必要だったのがアメリカでの本格的な言語研究でした。幸い、カリフォルニア大学バークレー校哲学科の看板教授だったジョン・サール教授は面識のなかった私が直接届けた手紙に応じて、客員研究員として迎え入れてくれました。2005年4月からの1年間、サール教授の講義とセミナーを聴講し、彼に提出したレポートとフィードバックを通じて私自身の研究の方向性の確信がつかめて、当初想定していた以上の成果を得ることができました。

 

この間、はじめて家族を離れてサンフランシスコにほど近いバークレーで過ごしました。3月、出発の成田空港には当時のパイオニア吹奏楽団の中心メンバーがサプライズで見送りに来てくれました。顧問として共に泣き笑いしてきた彼らの見送りに感激したことは今も良き思い出となっています。

 

バークレーでは現地に長く在住する日本人女性のアキコ・ルックさんに大変お世話になりました。昨今、大谷翔平選手の通訳がその信頼を悪用して大谷選手の銀行預金を搾取した事件が騒ぎとなりました。私も慣れないアメリカでの生活はアパート契約一つ取っても自分一人ではできませんでしたが、アキコさんは全面的に支援してくださり、私の信頼以上の宝物をくださったように思います。このように異国の地で最高の友人と出会うことができたのは私の人生の財産だと思っています。詳細は「バークレー日記」に。

 

2019年秋学期は特別研究員(サバティカル)の資格を得て、インドのデリー大学セントスティーブンス校に客員教授として着任しました。現地では英語を媒介語とする日本語教育の授業を行いました。日本語クラスの学生たちとデリー市内を観光に歩いたことや、セントスティーブンス校の創立記念行事でクラリネットを演奏させていただいことなど、さまざま思い出は尽きません。詳細は「デリー日記」に。

 

セントスティーブンス校の学生たちとインド門の前で(2019.11)

 

合計1年半の不在期間、私の授業科目を代行してくださり、ゼミ生を預かってくださった同僚教授の先生方にも心から感謝しています。

 

学生部長としての4年間

 

2008年4月から2012年3月までの4年間は創価大学の学生部長として従事させていただきました。学生の支援・激励から厚生・補導に至るまで学生に関するあらゆる領域を担当する職務は、言葉では言い表せない激務の連続でした。当時のことを回想すると今も目頭が熱くなる思いがします。

 

この期間の人生最大の経験と言えるのは、大学の創立者である池田大作先生からの学生に対する限りない激励に触れさせていただいたことでした。そのほとばしるような先生の熱情を終生忘れることはありません。今はただ、先生への感謝を今の自身の立場でどのようにお返ししていくのか、その思いでいっぱいです。

 

また、この期間に多くの学生と個人面談を行い、互いに触発し合ったことも私の人生の財産となっています。卒業して立派に成長された姿に接するとき、「後生畏るべし」の言葉の有難みと喜びを実感いたします。

 

著書の出版と科研費の取得

 

この20年間の間に、2008年6月刊の主著『発話機能論』(くろしお出版)をはじめとして、共著、編著を含めて8冊の著書を出版することができました。

 

山岡政紀著『発話機能論』(くろしお出版, 2008)

 

創価大学では学生部長在任中はもとより、離任後にも入試の責任者を拝命するなど多忙の連続でしたが、著書・論文の執筆はたいてい早朝5時に起床して夜明けの太陽を仰ぎながら出勤までの時間を使って執筆するのが常でした。元来自分は朝型ですので、早起きでの仕事は自分にとてもよい緊張感と集中力を与えてくれていたような気がします。

 

また、筑波大学大学院時代からの盟友である牧原功氏(群馬大学准教授)や小野正樹氏(筑波大学教授)らが共著出版に協力してくれたことにも感謝したいと思います。

 

この間、2009年度以降は科研費の基盤研究(C)を2課題連続、さらに基盤研究(B)を2課題連続で研究代表者として採択を得ることができ、現在も研究期間中で取り組んでおります。

 

特に長年取り組んできた配慮表現研究は国内の関連分野のトップの研究者に科研費の研究分担者として加わっていただき、年2回の研究会と年1回の研究論集の出版をベースとして、2019年には13名の共著者と共に編著書『日本語配慮表現の原理と諸相』(くろしお出版)を出版することができました。これによって日本における配慮表現研究の一つの指標を定めることができたと思います。

 

山岡政紀編『日本語配慮表現の原理と諸相』(くろしお出版, 2019)

 

健康面の変化

 

40代から50代にかけて全速力で突っ走るような生き方をしておりました。不規則な睡眠と食生活の影響で体重が90㎏近くまで増え、その影響で持病が悪化するなどして、多くの方にご心配をおかけしました。

 

2020年にインドから帰国した頃、ちょうどコロナ禍で大学の対面授業ができない時期に入りました。この頃から私自身も健康問題の改善のため、仕事量をコントロールせざるを得ない状態になりました。

 

長年の勤続疲労のツケもあって、2023年夏から口腔内の神経痛に悩まされ、その影響で体重が60㎏台まで激減しました。授業の途中で声が出なくなって立ち往生したり、入院で連続休講するなど、人生最大の健康不安に直面しました。

 

しかし、家族の支えもあり、本年2月下旬ごろからようやく状況が改善の方向に向かい、どうにか2024年度春学期の授業を普通にスタートできるところまで戻りました。大学教員としての終盤に向けて体調を整えてラストスパートをかけていきたいと決意しています。ご心配をおかけした皆さま方、献身的に支えてくれた家族に心からの感謝を申します。

 

この20年間を振り返るときに他にもさまざまに大きな出来事、大きな出会いがありましたが、ブログとして皆様にお伝えできる内容としてはこのぐらいでしょうか。さいごに、皆様への心からの感謝をもって締めたいと思います。ありがとうございました。