2023年の初めに当たり、大好きな日蓮大聖人の御書のなかから一節を拝読し、本年の座右の言葉としたいと思います。

 

総じて、日蓮が弟子檀那等、自他・彼此の心なく水魚の思いを成して異体同心にして南無妙法蓮華経と唱え奉るところを、生死一大事血脈とは云うなり。

(生死一大事血脈抄、全集1337頁、新版1775頁)

 

私自身、日常の教育、研究をはじめ、さまざまな仕事を通じて多くの方々と関りを持ちます。教育にも研究にも目的がありますが、短期的目的は個人の利害と結びつきやすく、そのため、ややもすると他者とのあいだで利害の相克が生まれがちです。さもなくば他者に無関心でいるままでしょう。

 

しかし、本当の長期的目的は何かを真剣に思索し、時には祈りながら求めたときに、そこには自己の利害を超えたもっと大きな目的が見えてきます。そこに照準を合わせ、そして心を通わせながら周囲の人々と対話していったときに、私たちは別々の体で別々の立場にいても、その人生の目的は究極のところ実は共通しているのだということに気づかされます。「異体同心」とはそのようなことを指すのだと思います。

 

世界ではまだ戦争が続いていますが、私たちの人生の究極の目的は一言で言うなら世界平和だと信じます。しかし、ただ世界平和と言うだけでは大きすぎて遠すぎて実感がないかもしれません。要はまず身近なところで周囲の人々と対話し、純粋な心、誠実な心で「異体同心」を作っていく。その一歩一歩を積み重ねていくことのなかにしか世界平和はないと思います。本年はその一歩を大切にする1年にしていきたいと決意しています。

 

※2022年12月28日に池田大作先生が聖教新聞紙上に発表された随筆「「人間革命」光あれ」にてこの御書を引用されています。