「コロナ禍」という言葉が定着しましたね。今の世界が置かれている「新型コロナウイルス感染症流行状況」を一言で表現する便利な言葉です。

 

この「禍」(か)という言葉にこのような造語力があったのかと思い、いつものように「現代日本語書き言葉均衡コーパス」(BCCWJ)で検索してみました。すると、たしかに医療用語との組み合わせでの用例がいくつか見つかりました。

 

ワクチン禍 8
予防接種禍 4
注射禍 4
麻薬禍 1
薬禍 1

 

特定の医療関連文献に集中して使用されていますが、麻薬以外はいずれも「副作用」による症状を「禍」で表現しているようです。

 

医療用語以外では「筆禍」が15例ありました。歴史上、「大阪朝日新聞筆禍事件」と呼ばれる一つの事件があったようで、15例はすべてその事件に言及したものです。詳細はここでは略します。

 

「災禍」は35例。「災」も「禍」も訓読みは「わざわい」ですから、「河川」や「延伸」のように類義語を重ねた熟語です。これは事件、自然災害、身内の不幸など、幅広く用いられているようです。

 

最近、おもしろいと感じるのは「このコロナ禍のなかで」というフレーズ。本日就任した菅義偉新総理も会見で何度か口にしていました。政治家だけでなく、キャスター、コメンテーターたちもよく使っていて、耳に慣れてきました。

 

何がおもしろいかというと「ころなかのなか」という畳語のような音の重なりに、です。いっそ「コロナ禍で」(ころなかで)と省略してしまってはどうでしょうか(笑)

 

明石家さんまさんはシルベスター・スタローンのことを勝手に「シルべスタローン」と呼んでましたし、麻生さんが総理だったときの「麻生総理」(あそうそうり)も毎回可笑しいなと思っていました。いっそ「あそうり」でいいんじゃないかと。

 

英字新聞もよく読みますが、この「コロナ禍」に当たる特別な表現はないんじゃないでしょうか。"COVID-19"だけでだいたい済んでいるようです。「コロナ禍のなかで」も "in COVID-19" で済みますね。日本語も「のなかで」じゃなくて「で」だけで "in" の意味を持たせてもいいような気がします。

 

HUFFPOSTより