本日、創価大学では9月卒業式がオンラインで開催されました。1000人収容のディスカバリーホールで無観客のライブ配信でした。壇上に着席したのは学長をはじめ教職員の代表と博士号取得者のみ。卒業対象者はZoomで参加。保護者や他の教職員は動画配信サイトのライブ配信を視聴しました。

 

創価大学・創価女子短期大学9月卒業式の配信映像より

壇上のスクリーンには卒業対象者のZoom画面が映っています。

 

大学院では4年前から秋学期入学が実施されているため、海外から留学して順当に2年間の博士前期課程・修士課程を修了した大学院生が大勢います。今回約20名の修了者のほとんどが海外からの学生でした。

 

大学院修了生・学部卒業生の名前が一人一人呼名されていきます。卒業対象者の多い3月の卒業式では見られない光景です。しかも今回は呼名と同時にスクリーンに氏名が大きく映し出されます。こうしてみると、一人一人に光が当たる9月卒業式も悪くないなと思います。

 

修了生・学部生本人は画面越しに元気に返事していきます。ちょっとおもしろいと思ったのは、外国人留学生が大半を占める大学院修了者ですが、最初の学生が「はい!よろしくお願いします!」と声を出したので、後に続く他の院生もみな「はい!よろしくお願いします!」になってしまいました。「よろしくお願いします」は英語や他言語にない日本語独特の便利な表現で、いろいろな場面で使えるのですが、どんな場面でも使えるわけではないところが実は難しいのです。今回は、巣立っていく人たちなので、「はい!ありがとうございました!」のほうがふさわしいです。案の定、日本人学生に移ったところから自然と、「はい!ありがとうございました!」になりました。言語学者なので細かいところにこだわりますが(笑)、これも留学生が多いスーパー・グローバル大学の創価大学らしい微笑ましい光景だなと思って見ていました。ひょっとしたら、「これからの私の活躍を見守ってください。よろしくお願いします!」という意味だったのかもしれません。

 

国際言語教育専攻・日本語教育専修の私のゼミからも一人の大学院修了者を送り出しました。彼女は中国出身の留学生です。入学したのは3年前の9月でした。1年目を終えたときに体調不良で本人は一時期退学を決意したのですが、歳の近い女子職員の方が窓口で親切に激励してくださり、退学ではなく休学に留まりました。そして、1年の休学期間中にすっかり体調を整えて昨年9月に再来日して復学。しかし、入れ替わりに私がサバティカルでインドに行ってしまったため、昨年秋学期は別の教授のもとで指導を受けておりました。

 

4月私が復帰すると、私のゼミに戻ってきてくれましたが、今度は授業がすべてオンラインに。修士論文の仕上げの段階で関わらせていただきましたが、1年次の時とは見違えるほど元気になっていて、論文の課題点をたくさん指摘してもすべて理解して適切に対応し、優秀な修士論文を完成させました。私は彼女の姿から人間の可能性のドラマを見た思いがしました。彼女に再挑戦の機会を残してくれた女子職員の方にも感謝でいっぱいです。

 

本日、八王子市内のアパートからZoomで卒業式に参加した彼女ですが、中国へ帰国する前にひと目会いたいと、午後にわざわざ私の研究室を訪ねてくれました。毎週毎週、画面越しに会ってきたものの、直接会ったのは2年ぶりでした。コロナ禍の今ですから、握手も敢えて控えましたが、「本当によくやった!立派だった!」と感動を伝えて、心の握手をしました。彼女からの心遣いの花束を嬉しく受け取り、私からは「一生涯、健康と幸福の人生を!」と本にサインして記念に渡しました。

 

10月から地元に戻って中国の公的機関で仕事をするそうです。日本語も使う仕事らしく、きっと流暢な日本語で立派に務めを果たすでしょう。楽しみに見守りたいと思います。直接会うことがなくても、コロナ禍が促進したオンラインでいつか近況でも聞けたら嬉しいことです。

 

立派に成長した教え子を送り出す卒業式の喜びを自分自身の励みにして、いよいよ来週から始まる秋学期の授業に取り組んでいきたいと思います。