5月25日のNHK朝ドラ「エール」。帝国音楽学校で「椿姫」のヴィオレッタ役の第二次審査の場面で、ヒロインの古山音がアリア「花から花へ」(Sempre libera)を歌いました。

そのとき、ライバル夏目千鶴子を含む4人の候補者は別のアリアを歌っていましたね。「花から花へ」の直前のアリア「ああ、そは彼の人か」です。ドラマではこの二つのアリアを続けて歌うことが共通の課題曲という設定だったのかもしれません。

ドラマでも「椿姫」の悲しいストーリーが紹介されましたが、この一連のアリアはまさにヒロイン・ヴィオレッタの心の揺れを表現したアリアです。

娼婦として生きてきたヴィオレッタは青年アルフレードの求愛を拒絶していましたが、あるとき、自分の心の中に恋が芽生えていることに気づきます。それを歌うアリアがこの「ああ、そは彼の人か」です。真実の愛に目覚めたことへの喜びと戸惑いを歌う、甘く切ないアリアです。

しかし、そのあと、その自分の恋心を、狂気だ!狂気だ!と打ち消し、自分が貧しい娼婦であることを思い出して、今までと同じように自由に飛び回って暮らすんだと自らに言い聞かせる歌が「花から花へ」です。

それではまた、著名なソプラノ歌手によるアリア「ああ、そは彼の人か」の名演奏をいくつか聴いてみましょう。

ヴェルディ「椿姫」より「ああ、そは彼の人か」
Giuseppe Verdi, La Traviata  "E strano! Ah, fors'e lui"

Natalie Dessay ナタリー・デセイ

 

Renata Tebaldi  レナータ・テバルディ


Diana Damrau  ディアナ・ダムラウ


Maria Callas マリア・カラス

1953年の録音ですが、マリアの声だけは不思議と鮮明に聞こえます。