12月7日はセントスティーブンス校の創立者の日(Founder's Day)でした。毎年、この日は午前10時から式典を行い、その後、記念撮影、レセプションとつづきます。

 

1881年にデリー市内最古のカレッジとして創立されたセントスティーブンス校。その創立者かつ初代学長は英国人のサミュエル・スコット・オルナット博士(Samuel Scott Allnutt)です。この方はもともとケンブリッジ大学の教授だった学者ですが、同時にキリスト教アングリカン教会の神父でもあり、その地位"Canon"を敬称として呼称されています。日本語に訳すとすれば、「尊師」でしょうか。ちょっと呼び慣れないのでここでは「博士」とさせていただきます。

 

  Canon Samuel Scott Allnutt

 

セントスティーブンス校は創立者オルナット博士をとても大切にします。大学の寮のうちAllnutt North(男子寮)とAllnutt South(女子寮)には博士の名前がつけられています。また、大学の食堂Messの正面中央の白壁にはオルナット博士の巨大な肖像画が飾られていて、学生たちをいつも見守っているかのようです。

 

12月7日は創立者オルナット博士の命日に当たる日です。この日を「創立者の日」と定めて、毎年この日に式典を開催します。私も招待されましたので出席しました。この式典にはいくつか特徴があります。一つは教授陣全員が赤いガウンを着用して式典に臨むことです。私はそのことを知らずに控室に集合したのですが、ある教授が「もしあなたが望むなら、ガウンを受け取れるオフィスに連れて行ってあげる」と言ってくれたのですが、時間も迫っていたのと、客員の身分でもあるので無理をせずガウン無しで臨みました。

 

もう一つの特徴は、創立以来、今日まで在籍した全教授陣の氏名を学長が読み上げるのです。バルギース学長は途中で何度か水を飲みながら20分近くかかって全員の氏名を読み上げました。厳かな式典だったため写真が撮りづらく、いい写真がないのですが、次の一枚は式典中の壇上の写真です。

 

終了後に校舎正面の前庭で記念撮影をしました。その写真が欲しいのですが、もらえるのかどうか。下の写真は撮影を待っている間に隣のレニッシュ副学長と一緒に撮った自撮り写真です。

当初、私は2列の端に立っていたのですが、バルギース学長に呼び寄せられ、前列中央の学長、副学長の隣に着席させていただきました。私も一度は遠慮したのですが、バルギース学長の創価大学への敬意を感じ取りましたので、謹んで従わせていただきました。

 

オルナット博士の事績や人柄などについてはまだまだ勉強不足ですが、カレッジの教授陣、学生たちから尊敬されていることはたしかです。創立当時はまだ英国の植民地時代ですが、インドの人々に対する蔑視、差別、支配などではなく、キリスト教の信仰に基づいて愛をもってインドの人々に接し、ケンブリッジ大学の教育理念、教育システムを採り入れた高水準の教育を提供し、インド人の人材を育て、その自立を促した人であるという理解は、おおかた間違っていないようです。植民地支配のすべてが負の遺産だったわけではなく、教育という精神遺産も遺しているわけです。

 

大学のウェブサイトによると、セントスティーブンス校は創立当時はカルカッタ大学に所属するカレッジ(分校)で、後にパンジャブ大学を経て、1922年に設立されたデリー大学のカレッジに転籍したとのことです。つまり、セントスティーブンス校はデリー大学よりも歴史が古いのです。

 

レセプションには母校を愛する卒業生も多く駆けつけていて、紅茶を飲みながらいろいろな方と出会うことができました。

 

もっともっとセントスティーブンス校から学びたいとの思いを強くした「創立者の日」でありました。