このほど、東京堂出版より待望の『日本語学大辞典』(日本語学会編)が刊行され、私の手許にも1冊届きました。旧版に当たる『国語学大辞典』(国語学会編)と並べて研究室の机上に置いてみました。なかなかの壮観です。箱の題字は『国語学大辞典』がヨコ、『日本語学大辞典』がタテになっていますが、中の組み版は逆で、『国語学大辞典』は縦書き、『日本語学大辞典』は横書きとなっています。中の写真は著作権に引っ掛かるといけないので省略。

 

 

いわゆる国語辞典ではなく、日本語学の学術用語約800項目をわかりやすく解説したものです。英語の書名が Dictionary ではなく、The Encyclopedia of Japanese Linguistics となっているように、辞典というより百科事典というべき内容となっています。

 

光栄なことに私も執筆者の一人に加えていただき、「機能文法」と「発話行為」の2項目を担当しました。執筆依頼を受けたのが2009年12月、原稿を提出したのが2010年7月。その後、一度だけ編集委員とやり取りして修正稿を提出しましたが、長いあいだ音沙汰がなく、心配しておりました。巻頭の「刊行の経緯」を読むと、編集委員の方々の、血のにじむようなご苦労を経て今日の刊行に到ったことがよくわかります。自分の原稿提出は全体の中でも早い方だったようで、あまりご迷惑をかけずに済んでよかったと思います。

 

大学生の時に旧版の『国語学大辞典』を買いましたが、当時の定価が19000円。学生にとっては勇気の要る買い物でした。しかし、この辞典には大変お世話になったので、十分に元は取った気がします。今度の『日本語学大辞典』は定価が37500円。かつての約2倍となっています。学生さんには手が届かない値段ですが、図書館などに順次入っていくと思いますので、活用していただけることを願っています。なお、日本語学会会員は少し安く購入できます。

 

国語学会が日本語学会に改称したのが2004年。その頃から『国語学大辞典』を抜本改訂した『日本語学大辞典』の構想が議論されていたようです。かつての国語学の系譜のみならず、英語学や一般言語学を学んだ人たちがどんどん日本語研究に参入し、その研究成果も日進月歩で新たな展開を見せていましたので、新しい大辞典の刊行は必然だったと言えます。

 

『日本語学大辞典』では実際のところ抜本改訂というより、ほぼ全編を新たに書き下ろすこととなり、項目の選定からやり直したと言うのですから、編集委員会の先生方も腹の据わりぶりには恐れ入ります。いくつかの項目をざっと読んでみましたが、具体的な用例を用いた説明がなされていてわかりやすいと感じました。たしか執筆当時、抽象的な説明を避けて具体例を示す方針が編集委員から示されていたと記憶します。十分にその方針は徹底されているのではないでしょうか。

 

ともかくも編集委員の皆様、執筆者の皆様、東京堂出版の関係の皆様に心からのお祝いを申し上げたいと思います。