今日は創価大学パイオニア吹奏楽団のOB会である創大金吹会の同窓会があり、350名を超える卒業生が一堂に会しました。ゴールデンウィークとは言え、こんなにも大勢が集まるとは驚きです。

 

会合形式の大会をやったあと、大学の食堂でレセプションを行いました。卒業後、漫才師として活躍する二人が漫才を披露してくれて、場内は笑いに包まれ大盛り上がり。二人がお笑いの道に進むと決めた時から見守ってきた私には、皆を楽しませる軽妙なやり取りを支える誇りと信念のようなものが伝わってきて、私だけかもしれないのですがじーんと熱いものがこみ上げて来ました。

 

もう一つ嬉しかったのは私がこんなにも吹奏楽団の活動にコミットするきっかけを作ってくれた26期(1996年入学)のUくんと再会できたことでした。大学のクラブ顧問は高校までのそれとは違って、年に1回、活動継続願に署名捺印するだけでほとんど何もしないというのが通例で、私も1991年に吹奏楽部の顧問を学生に依頼されて引き受けて以来の約8年間は、年に1度の執行交代式で挨拶する程度の普通の顧問でした。

 

しかし、98年、当時の吹奏楽部部長だったU君が私の研究室を訪ねきました。頭のよさそうな工学部生の彼が意を決したような表情で話し始めました。

「ぼくたちは、自分らの創価の音楽でどうしても全国大会に行きたいんです。何が何でも勝ちたいんです。そのためにお力を貸していただきたいのです」

そのとき、彼のつぶらな瞳は心なしか潤んでいて、もう少しで涙となってあふれ出そうに見えました。

 

大学教員というのはとにかく多忙ですし、その当時私はちょうど筑波大学に提出する博士論文の執筆中でもありましたが、真剣で誠実な青年の言葉に胸打たれた私は、そこから吹奏楽部のお手伝いに動き始めます。具体的にはまず一流の指導者を迎えること、次にそれを維持するための財政基盤を築くこと、この二つでした。

 

その後のことは生々しい話になるので省略しますが、私がUくんの言葉に胸打たれて動いたように、私の呼びかけに共鳴してくださった指揮者、OB会をはじめとする大勢の方の支援・協力があって、吹奏楽部はみるみる成長し、発展していきます。その後、2000年にはコンクール都大会で悲願の金賞を獲得、全日本吹奏楽コンクール(全国大会)への切符を獲得します。初出場の全国大会でも金賞を獲得。そのときUくんは工学研究科の大学院生になっていて出場はしませんでしたが、後輩たちの快挙を心から喜んでくれました。

 

大学が強化部に指定しているのは硬式野球部、陸上部駅伝チーム、柔道部の3部のみです。大学からの特別な強化や支援がないなかで学生たちのその思いの強さで日本のトップに立つ快挙を成し遂げたのでした。当時、そのことをいちばん喜んでくださったのは、創立者である池田大作先生でした。学生の心に寄り添い、全日本出場の一週間前に大きな激励をしてくださったことは以前、個人サイトの日記(魂の激励─創大パイオニア吹奏楽団の原点)に書いたことがありました。そして、全国大会終了後には「創価大学パイオニア吹奏楽団」と命名までしてくださったのです。こんなにも学生の身近な場所にいてくださる創立者がほかにいたという話は寡聞にして知りません。

 

レセプションで、まもなく40歳となるUくんと約15年ぶりの再会の握手を交わしながら、当時の熱い思いを私にぶつけてきた時のことを覚えているかい?と尋ねると、どんな言葉で言ったかは覚えていないけれども、その強い思いを持っていたこと、その思いを抑えきれず顧問にお願いしに行ったことはたしかに覚えているとしみじみ応えてくれました。「君のせいで僕は今でもこうしてるんだよ」と言うと、周囲にいた近い期の諸君たちから笑い声や突っ込みが湧き起こりました。

 

大きなクラブとなったパイオニア吹奏楽団はその後、大阪フィルハーモニー交響楽団首席トロンボーン奏者としても著名だった磯貝富治男先生を音楽監督常任指揮者に迎え、2003年、2007年の全国大会出場をはじめ、東京都を代表する大学吹奏楽団として活躍を続けます。


今日のもう一つの大きなトピックは、献身的な指導を続けて来てくださった磯貝音楽監督が大会に参加され、大学からの特別表彰を受けられたことでした。私も磯貝先生に心からの感謝と賛辞を送りました。関西在住でありながら東京の大学で指導を15年も続けてこられたことは一つの奇跡でもありましたし、それは創価大学の教育理念に対する磯貝先生の深い理解と賛同があってのことでした。

 

しかし、磯貝先生の謝辞のなかには私に対する大変もったいない過分な返礼が含まれていました。

思い返すと、本当にいろいろなことをよく語り合いました。私の素人マニア的な偏った音楽知識をいつも微笑みながら聞いてくださっていましたが、それだけでなく創価教育のこと、人間教育のこと、学生一人一人の真の成長とは何か、とテーマは多岐にわたりました。そのことにも感謝は尽きないのですが、私に対する言葉の真意は、「お前は心のどこかでもうそろそろ辞めようと思っているだろう。とんでもない。もっとやり続けろよ」との叱咤激励と、受け止めることにしました。

 

懐かしい友と再会し、原点を確認しながら、今日からまた新たな気持ちで性懲りもなくやり続けていこう、そんなふうに思わせてくれた今日の一日を、ここに書き残しておきたいと思います。