昨年のいつだったか、本学のパイオニア吹奏楽団の学生と懇談する機会がありました。その学生は中学生の時からずっとE♭クラリネット専門で、E♭クラが大好きだとのこと。
吹奏楽では大勢のB♭クラリネットとフルートの間で一人だけ短いのを吹いている、あれです。B♭クラ奏者の私としては、殊勝な学生だなあとまず感心。
じゃあ、E♭クラが活躍する幻想交響曲の第5楽章とかショスタコ5番の第2楽章とか、古今の名曲をさぞかし大好きなのだろうと訊いてみると、あまり知らないとのこと。私にはE♭クラの楽しみイコールあの名曲たちぐらいに思っていたので、少々意外に感じられました。
しかし、オーケストラでのE♭クラがその独特の乾いた音色や快活な音色で曲に花を添えるのと違って、吹奏楽のE♭クラはフルートと共通の音域を担当することによってフルートとB♭クラとの音色を融合させるつなぎの役目があり、チームプレーの上ではとても大切です。オケのソロで目立つことではなく、吹奏楽団の高音域を支えるE♭クラの役割に徹してなおかつそれを「好きだ」と言えるのであればそれはそれで実はとても立派なことです。
そのうえで、これらの名曲からよりいっそうE♭クラの魅力を発見できるかもしれません。というわけでせっかくですので、E♭クラが活躍する名曲4曲を紹介したいと思います。E♭クラが登場する時間を書きましたができれば全曲通して聴くのがお奨めです。
ベルリオーズ作曲「幻想交響曲」第5楽章
小澤征爾指揮 ボストン交響楽団
E♭クラの登場は1分43秒
ショスタコーヴィチ作曲「交響曲第5番」
バーンスタイン指揮 ニューヨーク・フィルハーモニック管弦楽団
E♭クラの登場は第2楽章 18分29秒
ラヴェル作曲「ボレロ」
ゲルギエフ指揮 ロンドン交響楽団
E♭クラの登場は2分54秒
ヤナーチェク作曲「シンフォニエッタ」
ユッカ=ペッカ・サラステ指揮 ケルンWDR交響楽団
E♭クラの登場は第5楽章 20分00秒