牛田智大ピアノリサイタル(サラマンカホール) | 私のピアノライフ  with classical music

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ピアノ練習、コンサート等で感じたことを気ままに語っていきます。

7月6日(土)、岐阜のサラマンカホールへ行きました。

岐阜県在住なのに、サラマンカホールは初訪問。(近くの体育館は何度も行っているのですが)

席数700ほどのホールなので、有名な人が来るとすぐ満席になってしまい、気づいた頃はチケットなし。

行くのを躊躇するのは、家からけっこう遠いのと、公共機関を使って行きにくいこともあります。

今回は、昼の公演だったので、車で出かけました。

 

ホールへ入ると、

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完売御礼の文字が眩しいですね。

 

ホールへの入り口

お洒落な文字。

 

チケットをもぎってもらい、プログラムをもらうと

ピアノの愛好家の方、数名の発表会がありました。7月6日は「ピアノの日」。それにちなんだ催しでしょうか。

習って数年の方が、堂々と人前で弾いていて、あがり症の私は、ちょっと羨ましくなりました。

 

階段を上がると

古都サラマンカについて説明してあるプレートがありました。サラマンカホールのサラマンカはこの古都の名前なのですね。初めて知りました。

サラマンカの建物の一部を模したレリーフ。

 

今回の席は上手のバルコニー席。バルコニー席を取るのは、奏者の姿が見える、チケット代が安い、他の人の頭が見えない、前のめりになって聴いていても咎められないといったところです。舞台袖の様子もちらっと見えますし、出てくる瞬間が一番に見えることもメリットです。ただ、転落防止でけっこう柵が邪魔してストレートには見えないことが多いのですが…。

 

【プログラム】

ラヴェル:ソナチネ 嬰へ短調M.40

ブラームス:ピアノソナタ 第3番 ヘ短調 Op.5

グバイドゥーリナ:シャコンヌ

シューベルト:ピアノソナタ 第21番 変ロ長調 D960

 

今回、牛田さんで初めて聴くのが、ラヴェルとシューベルトの曲。

ラヴェルは、予習で一応、音取りをしました。

弾き始めた瞬間、自分の読譜能力の低さに愕然。ラヴェルの音がわかっていたつもりだったのですが、全くわかっていなかったようです。だいたい、1、3楽章はあのテンポでは一生弾けそうにない。速く弾けないとラヴェルのきらきら感は出せないんだなあと心の中でため息。

 

2曲目のブラームスは以前も素晴らしかったけど、また深化していました。牛田さんの演奏はいつもピアノの世界を超えている。ピアノでオーケストラをしているようだと、前から感じていたけど、それがどんどん緻密かつ深くなっているのに毎回、驚かされます。この人はどれだけの音色を声部ごとに使い分けているのでしょう。そして、なんて心に沁みる音なのでしょう。

 

後半のグバイドゥーリナは、2回目。最初、聴いた時は音が空間の中に飛んでいると思ったのですが、実は美しい旋律がいっぱい散りばめられていることに気付きました。なんだか癖になりそうな曲。さすがにこの曲の時は、楽譜を置いていました。譜めくりは男性の方。この曲が終わって舞台袖に引っ込んだ時、牛田さんが譜めくりの方にありがとうのジャスチャーをしていたのが見えました。相変わらず、牛田さんは礼儀正しい方ですね。

 

最後は、シューベルトの後期のソナタ第21番。若い頃、よく聴いていたし、やたら長いので、譜読みはちらっとしましたが、弾く曲ではないと悟りました。近代の作品に比べると、音の使い方は素直というか分かりやすいのですが、シューベルトはピアノ弾きでなかったため、なんか弾きにくい設計になっている。たぶん、和音の音の出し方が難しいんだろうなと思うのです。

そして、曲調が地味。派手さのない曲を聴かせるのは、とてつもなく難しいと思うのですが、牛田さんのシューベルトは、本当に素晴らしかった。牛田さんはとにかく音色の使い分けが半端ない。同時に右手と左手で全く異なる音色を出せるし、声部の音のバランスの取り方も絶妙。その上、旋律はきちんと歌っている。全部の曲作りが丁寧なのです。

 

アンコールは2曲。

最初、モーツァルトのピアノソナタ第4番から2楽章。今、リーズ国際コンクールでの配信で聴いていますが、その時より、深化していて、本当に愛らしくて素敵なモーツァルトでした。

 

2曲目は、シューマンのピアノソナタ第1番より2楽章。この曲も聴くたびに、素晴らしくなっていくなと感じています。いつもとろけそうな甘さに、やられます。そして、クララとシューマンの恋物語の一部を見ているような気分になります。

 

牛田さんは自分がしゃしゃり出てこないで、いつも作曲家の姿や曲の内容が伝わってくる演奏。作曲家を心からリスペクトしているのを感じます。

偉大な作曲家との橋渡しをしてくれる牛田さんの演奏はこれからも目を離せないですね。