エスメ弦楽四重奏団コンサート 三重県文化会館 | 私のピアノライフ  with classical music

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三重県文化会館で行われたワンコインコンサートで、エスメ弦楽四重奏団の演奏を聴いてきました。

ワンコイン、つまり500円で、1時間のコンサートが聴けるというお宝コンサート。

津駅から、ホールまで、1,8km。バスを待つのがおっくうなのと、体力作り(?)になるからということで、ホールまで徒歩で行きました。

ホールへ着き、指定された座席に着席。開演は11時30分なのですが、そのちょっと前に、館長さんが挨拶。出演者について話されると同時に、近々行われるコンサートについて語り始めました。そのコンサートがこれ↓

なんと、新日本フィルの演奏会に、共演者が、亀井聖矢さん。つい、先日ロンティボー国際コンクールで優勝されましたね。館長さん曰く、2年前に聴いた時に、美しいピアノに感銘を受け、今度の演奏会のオファーをしていたとのこと。先見の明があったことを嬉しそうに語っていました。

 

この日の演奏者は、韓国の女性カルテット、「エスメ弦楽四重奏団」。

エスメは、愛や尊敬といった意味の古フランス語の単語に由来するそうです。

世界の様々なコンクールで優勝し、世界的に活躍しているそうです。

初来日で、数日前に武蔵野で演奏会を行ったようです。

 

【プログラム】

ピアソラ:天使へのイントロダクション

シューマン:トロイメライ

シューベルト:弦楽四重奏曲第14番 ニ短調 D810「死と乙女」

 

 

舞台に現われた韓国の若き女性奏者たち。ドレスがいかにも韓国っぽい。

日本人はお姫様系や、清楚な感じのドレスを着るけど、韓国人の彼女たちは、妖艶、クール、主張する衣装と言った感じのものを身に着けている。たぶん、日本人は選ばない衣装だと思う。

1stバイオリンの人は黒地に花柄、2ndとチェロの人は、えんじ色、ヴィオラの人は黒の衣装でした。

 

ピアソラは、チェロのピッツカートから始まります。そこに、ヴィオラや2ndバイオリンが絡んで曲は進んでいくのですが、なかなか1stバイオリンが出てこない。そして、弓で音を出すのでなく、楽器の胴の部分を叩いたり、なんとも奇妙な響きの音を出したり、いかにもピアソラらしい。ピアソラはアルゼンチンの作曲家。バンドネオン奏者でもあり、タンゴを採り入れた作品を手がけています。独特な音の世界観、響きは、エキサイティング。

 

シューマンのトロイメライは、弦の息の長いフレーズがピアノとは違った趣きを醸し出していました。

 

3曲目の前に、エスメ弦楽四重奏団のマネージャーの方のトークがあり、次のシューベルトの曲は続けて最後の楽章まで演奏するので、途中で拍手しないでねと言っていました。このトークのおかげで、最後まで、曲が途切れることなく演奏されてよかったです。

演奏中、咳き込む人がどうしてもいて、隣席の人はあまりに咳き込みが止まらなくて、1楽章が終わったところで退場されていました。私は咳き込みより、電子音やビニールや紙をかさかささせる音の方が何倍も気になります。今回、電子音がならなかったので、よかったです。

 

シューベルトの「死と乙女」は、全楽章、短調でできています。「死を恐れる乙女と死神との対話」を表しているそうです。

2楽章は歌曲「死と乙女」を基にした変奏曲になっています。

全曲を通じて、恐怖が差し迫ってきて、不穏な感じが漂っています。聴きながら、この曲って、歌曲「魔王」の世界観と似てる!と感じました。「魔王」も、最後、子供が魔王にさらわれ死んでしまう。たぶん、子供は病気だったんでしょうね。

実は、シューベルトも長年、病に苦しめられていたようですね。死を身近に感じていたかもしれません。

聴きごたえは十分すぎるほどある曲でしたが、弦楽四重奏は聴いていて疲れますね。

オーケストラの曲はいろんな楽器の音色があって、音に包まれのですが、弦楽四重奏は、音がストレートに向かってきます。それぞれの楽器がソロなので、音の線がクリアで、奏者同士の駆け引き、調和の妙を体験できるので、スリリングです。

オーケストラだと心を開かせてくれるのですが、弦楽四重奏は、聴く方もストイックにならざる負えない気がするのです。

聴いて単純に楽しむのが難しい、ただ、聴いた達成感はある。山登りやマラソンを終えたような楽しみに近いものを感じました。他の例えで言うなら、茶道のような感じ。一見すると、面白くなさそうだけど、やってみると奥深さにはまってしまうような感じ。

演奏は、4人の奏者の息がぴったりあって、不気味さのなかに時々、明るい色彩も感じられなど表現も豊かで素晴らしかったです。

 

アンコールは、エリック・サティの「ジムノペディ第1番(シュテファン・コンツ編)」。フランス音楽は、おしゃれな響き。

重い曲の後の、この優雅さは気持ちいい。曲の途中で、1stバイオリンが足踏みをしていました。新しい時代の曲は、いろんな要素を曲の中に盛り込みますね。

 

帰りのバスの中で、このワンコインコンサートを毎回、楽しみにしていてチケットを買いに行っているという会話が聞こえてきました。世界で活躍するような演奏家を招いているのが、驚きです。アマオケや学生オケでもチケットは1000円以上、取っているのに…。