スピノザの診察室 夏川草介
あらすじ
雄町哲郎は京都の町中の地域病院で働く内科医である。三十代の後半に差し掛かった時、最愛の妹が若くしてこの世を去り、一人残された甥の龍之介と暮らすためにその職を得たが、かつては大学病院で数々の難手術を成功させ、将来を嘱望された凄腕医師だった。哲郎の医師としての力量に惚れ込んでいた大学准教授の花垣は、愛弟子の南茉莉を研修と称して哲郎のもとに送り込むが……。
スピノザとは、オランダの哲学者。人間の行動と感情を嘆かず
笑わず嘲らず、ひたすら理解しようと努めた。ヨーロッパの
哲学・思想史においてつねに重要な位置を占め、独自の魅力を
放ち続けている。
大学病院でかなりの評価を得ていた哲郎だったが、妹の死に
よって一人になってしまった甥の龍之介と暮らすことを決めた。
二人の生活により良い方法として、それまで築いた地位など
まるで未練もなくやめてしまった哲郎に、同僚たちは驚きを隠せなかった。
再就職したのは大学病院とはまるで規模の違う地域病院で、
そこは終末期の患者が通うような、規模だけでなく目指すものも違う、そして同僚たちの人間味溢れた患者への対応にも共感し、内科医としてこれからの自分に何ができるか?日々、そんなことを考えながら患者に向き合っていた。
治せる病気は大学病院に任せ、自分たちは病気と共に生きる患者に寄り添おうと。
そんな哲郎の腕を頼りにしているのは大学病院での先輩・花垣
だが、哲郎の人間性も高く評価していて、転職したその選択を
ある意味認めていた。
ある日、愛弟子の南茉莉を実習させてくれ!と送り込んでくる。
技術だけを高めようとする南に、花垣は哲郎に託すことで違う
成長を見せてくれるのではないかの期待が。だが、先輩ならではの思惑もあり。。。
昔は往診をして下さる先生があっちこっちにいました。
祖父も祖母もそして父も、最後は同じ先生にお世話になり、
心穏やかな最後だったと思います。
一人残った母は、知らない土地に住む私たち姉妹の所には来る
こともなく、介護付きのワンルームに引っ越しました。
大家族の中で嫁としての大変さを十分過ぎるくらい知っていた母ですから、嫁に行った娘に、増して3人とも長男に嫁いでる、
はなから娘に頼ろうなんて思わなかったのでしょうね。
母の入居していたホームは、要支援1から入れました。初めの
うちはそれまでお世話になっていた医院や総合病院、何ヵ所かに私たちが付き添い通院していました。
最後は肺炎だったのですが、浮腫が出ていた母にホームドクターは何の手立ても施さず家族への説明もなくて、このままでいいんです!…と。
妹と、介護タクシーで総合病院に連れて行ったところ、緊急入院になりました。
ホームに入っていれば安心、ある意味そうかもしれないけど、
ホームドクターの考え方次第だとその時すごく実感しました。
マチ先生(雄町哲郎)のような、患者さんの気持ちを大事にしてくれるような先生が主治医だったら、また違う思い出が残った
でしょうね。
夏川草介さん、2年前に一冊だけ読んでいました。
感染症がまん延しているのに受診できる病院がなく、その受け
入れをした唯一の病院の医師が主人公の小説でした。
それまでなかった同僚たちとのいろいろな思い… あまりにも
リアルだった。
今更ですが、お医者さんだったのですね。
南杏子さんも好きですが、夏川草介さんも読みやすくて、何よりほっとする小説でした。