房総で伊予ヶ岳と津森山に登った日の午後です。
現在地は安房郡鋸南町。鋸南町と言えば菱川師宣くらいしか思い浮かばなかったが、小さな神社にもそれぞれの趣があるようなので訪ねてみます。①~⑩まで。
①日枝神社(鋸南町上佐久間)
をくづれ水仙郷から佐久間ダム下へ下ってくると、まずこの神社。
手水鉢は明治33年で、浮彫の獅子がくわえているのは牡丹だろうか。
狛犬は文久2年の江戸流れ。江戸期の鋸南では捕鯨が行われていた。それと江戸流れにはどこかで繋がりがありそうな気がする。クジラは当然江戸へも流通しただろう。
毛並みの良さと注連縄が印象的だ。
②八幡神社(鋸南町中佐久間)
県道184をもう少し海の方へ行く。車で鳥居をくぐって急坂少しで広い駐車場がある。
建具囲いのさっぱりした拝殿の前に石燈籠と狛犬がいる。
文化10年造立で、独特のオーラがある。意外にサッシとコラボしてたりして。
迫力のある顔つきで、足のツメも逞しい。宝珠もあります。
色合いの映える狛犬だ。深い世界に浸っているよう。
知的なタイプなんだろうか。石工の感性の冴えでもあろう。
狛犬に気を取られすぎたけれど、拝殿の軒下では鬼が梁に噛みついていた。
③汐止橋(鋸南町元名)
次は北上して、JR内房線保田駅の近く、明治28年建築の石橋です。石積上路アーチ橋という。土木遺産に認定されている。石材は地場産の保田石である。
広い駐車場があるけれど、アプローチが複雑な細道で難儀します。
上を歩いてみても何の変哲もないので、眺めて感心して終わりです。しかしこんな特別な事情もない所に、よく架けたものだ。
④加茂神社(鋸南町保田)
次は保田駅のすぐ南にある。明治31年の江戸流れ。どこかで見かけたような、流麗な姿だ。
子供が前と後ろに二匹遊んでいる。粋で見応えがある。
拝殿を覗いてみると、姿のよく解らない獅子らしきものがいた。
⑤吉浜神社(鋸南町吉浜)
さらに南の保田漁港のあたり、狭い踏切を渡った正面にある。狛犬は二段構え。下は年代不明。
上段のは大正5年生まれだった。
何故か左右共に口を開いて、海風を吸い込んでいた。
⑥菱川師宣記念館(鋸南町吉浜)
今日は菱川師宣の浮世絵も見ていくことにした。菱川師宣は浮世絵の初期の画家であり、錦絵が誕生する前の時代に活躍した。浮世絵の祖とも呼ばれる。
見返り美人図の作者として有名である。
やはり見返り美人はブロンズではなくて、浮世絵に限る。
今日は知らなかったけれども、企画展をやっていた。1時間ほどかけてじっくりと鑑賞していきました。
⑦大六神社(鋸南町大六)
さて次は、安房勝山駅の北東にある浅間山の麓。ここまでの神社の中では珍しく、森に包まれている。ちょっと落ち着く感じがする。
石燈籠2対から狛犬へと、一直線に並ぶ風情。
これまた風格と味わいのある江戸流れだが、生年月日は不明です。
ここも何故か両者とも口元が同じで、阿吽ではない。
お腹周りだけきれいなのはなぜなんでしょうか。
美しい毛並みです。
⑧大黒山展望台(鋸南町勝山)
次は大黒山に登る。大黒山は安房勝山駅の西、勝山漁港に面して屹立している標高75mの山。かつては周辺一帯がレジャーランドになっていて、山頂に登るエレベーターがあったというから驚きだ。今はその痕跡はなく、怪しげな更地が残るのみ。
遊歩道を登っていきます。
周囲を絶壁に囲まれた山だが、全山樹林に覆われている。登りつめた山頂には展望台がある。
展望台の一番上には大黒天が待っていた。
勝山漁港の沖合には、浮島と大ボッケ・小ボッケが見える。太陽が相模灘に傾いていった。あくまでもBクラス的な房総の景観である。房総百景とかがあるならば、塗りつぶしてみたい。
展望台から南側の、勝浦漁港の眺め。
さらに東を望めば、双耳峰の富山と左手前には削られた津辺野山も見える。
2005年発行の『房総山岳志』を久しぶりに本棚から取り出してみた。房総の山400座以上が紹介されていて、登山道の有無も書いてある。津辺野山にも一応道らしきものはあるが、行ってみたらヤブで消滅なんて、大いにあり得るだろう。
⑨白幡神社(鋸南町下佐久間)
夕刻の16時になったが、もう少しだけ訪ねていきます。大黒山から少し南へ、大乗院と並んで建つ神社。今日見た中では一番風化している、弘化2年。子供を抱えている。
風化はしていてもなんとなく、鋸南町の狛犬の流れを汲んでいるように思われる。
境内には庚申石祠が並んでいた。
丸彫りの猿が奉納されている。
石祠の中にも隠れていた。
⑩浅間神社(鋸南町岩井袋)
さてようやく最後となりました。ここは鋸南町の最南端、岩井袋漁港に面している。石段を登った、丘の中腹に建っている。1対+1基。
明治20年、本日の締めくくりの狛犬でした。
拝殿の裏は岩屋になっていて、そこに本殿がある。その奥にも岩穴に扉がついていた。
境内から見下ろす岩井袋漁港。16:30終了です。
今日は岩井海岸に面したコンドミニアム。先週は相模灘を眺め、今週は浦賀水道を眺める。どちらも同じ、つながった海ではあるが。
北に天満山と岩井袋の入江が見えて、大黒山はその陰になってしまった。
天満山にも登る道はあるらしいな。
つづく