飯士山神弁コースの格闘 | 降っても晴れても

降っても晴れても

山に登ったり走ったり、東へ西へ・・・

飯士山に登るのも今回が3回目。今日のコースは神弁コース。関越トンネルをくぐって湯沢ICが近づいてくると、目の前に屏風のようにそそり立つ鋸尾根である。

湯沢町ではこのコースを、登る人が少ないからという理由で整備をやめて廃道扱いにしてしまった。力ずくで登るには、今が旬かもしれない。

 

826mを越えて、いよいよ鋸尾根の核心部が始まる

本日のGPS軌跡。下山は最もポピュラーな岩原南コースで、登山口の間は1時間歩く。

電子地形図25000(国土地理院)を加工して作成した。(令和元年手続改正により申請適用外)

注:この地形図のスケールは編集されています。距離を参照される場合は元のスケールで確認してください。

 

【2024年6月6日(木)】 湯沢中央公園駐車場7:40~神弁コース登山口8:12-17~547m第三休憩所8:58~826m標尾の頭10:00-05~南峰合流点11:05-10~飯士山11:25-40~岩原コース登山口12:30~駐車場13:03  行動時間5時間23分

 

今日は気合を入れて行く。アミノバイタルも飲んで、準備万端で出発。湯沢中央公園から仰いでも、高速から眺めた威容は隠れてしまった。緑のもっそりとした尾根しか伺えない。家内は充電中なので、今日もソロで。

 

登山口まではしばらく歩く。川沿いから、いちご村経由で神弁橋のたもとへ。初夏ののびのびした景色は、今日の激闘を全く暗示していない。

 

これが神弁橋。橋の山側のカーブの所に神弁コース登山口がある。

 

ここが登山口です。左に小沢があって、正面の草藪の中に登山道の名残がある。かつては標柱も立っていたようだが、倒れて朽ちて草に埋もれているのだろう。まず目を凝らして、最初の第一歩の位置を決めねばならなかった。先が思いやられる。

 

草の中に細いフミアトはあった。しかしすぐに朝露に濡れた。しばらくは沢沿いで、まもなく右手の斜面に上がっていく。上に赤テープがぶら下がっているが、そこまでは激ヤブを無理矢理這い上がった。

で、その先は超急登。樹林内なので下草はないが、すでに四足状態である。トラロープがあるだけ、ラインは解る。

 

超急登が終わると道は右手の山腹をトラバースしていく。ここもラインは不明瞭だ。地形図の点線と実際の道が違うので、GPSにデータ入力は必須である。それでも微妙な地形に惑わされて、迷ったポイントもあった。

ようやく尾根筋に達して(426m地点)、少し道の見え方もマシになった。少し先に㐧1休憩所という傾いた看板があった。その上には東山と書いてある。このコースは別名東山コースともいう。

 

序盤のルートファインディングはちょっとした核心部だった。トラバースでどの高さをキープするかが難しい。とても長く感じられた。

 

以後は基本的に尾根をたどる。歩きやすい(ヤブの薄い)区間は時間稼ぎのためにペースアップするが、そう長くは続かない。早くもどっと汗をかいてくる。

500mラインを越えたあたり。ヤブが断続的に攻撃してくる。

 

547mのゆるいコブに着くと、この標識。それなりに登られた時代もあったのだろうか。地図を見て現在地を確認すると、まだこんな所かとガックリした。ヤブ自体はあまり写真を撮ってないので、たいへんさが伝わりません。

花を見つけても、気持ちのやすらぐ暇はなし。800m圏内の台形状ピークまで、登り一辺倒。ササと灌木の中に細々とフミアトが続く。

 

その登りを半分くらいこなした所で、行く手が見えた。

足元にギンリョウソウ。今年初めて見たかもしれない。

 

800m圏内は四つほどのコブに分かれている。尾根筋が一時的に広くなっていて、ヤブの密度も高くなった。フミアトの形を留めていない箇所も多々あった。ヤブのホコリをかぶって、クモの巣は無視して、首筋に虫が入る気配を感じつつ進む。やっと標尾の頭を通過した。

ここまで登山口から1時間40分かかった。若干の予定オーバーだ。ヤブの酷さも、若干予定オーバー。この先、行けるんだろうか?撤退?いや、この道を戻るくらいなら登ったほうがましだ。

 

行く手の左には負欠岩コースが見える。スラブ中間の左端に負欠岩が見える。中央の緑の尾根が下山用にも使われる尾根コースである。一昨年に周回した。こっちよりもあっちのほうが快適だった。

右手正面には、これからたどる鋸尾根。ぜんぜん鋸に見えないのは目の錯覚だった。尾根筋は俄然細くなってくる。片被りのヤブに押し負けそう。一歩進むのに全身の力が要る!

 

岩場もあるのかという不安は抱えていたが、あまりなかった。多少こんなリッジを歩いたり、

こんなスラブを下ってきたりするが、概ね易しい。

 

さらに急峻になってくる。振り返ってみる。

ド急登だけど、これは楽なほうです。ここを下山に使うのはあり得ないと思う。『新潟百名山』のガイドでは下る記述になっていて、しかもさらりと書かれている。鵜呑みにするのは危険極まりない。自分は廃道だと言われてる場所へ来てるのだし、心の何処かで楽しんでいるわけだが。

 

ちょっと庭園っぽい。

写真によく出てくる岩場。逆S字状に間をすり抜けていく。問題なし。

 

湯沢の町と関越道。霞んでいて、景色の色もいまいち。

尾根の一番細い所は両側にロープが張ってある。掴まって役に立つものではない。

 

鋸尾根の部分は、地形図を見た限りでは速く抜けられる気がした。しかし甘かった。突然断崖に阻まれて巻道を探したり、体力を試されているような道が続く。

しかし細尾根がやがて斜面に吸い込まれて、終わりが近づいてる気配がする。岩原コースを登った時に見た分岐の標識が目に浮かぶ。

 

その瞬間は突然訪れた。南峰分岐点の登山道に飛び出した。本日最高の瞬間だった!

ここで神弁コースは終わったのである。もはや完全なるバリエーションルートだ。ちなみに下るのは通行困難ではなくて、不可能ですよ。

 

地形図的にはこんな感じだが、現実は厳しい。

 

あとはもう整備された登山道をゆく。しかしせっかくの飯士山という舞台があって、良いルートが埋もれていくのはもったいないと思う。

三度目の山頂に到着~ 標高は変わってないね。新潟の御夫婦と、しばし談笑。

 

すっかり気も緩んで、岩原南コースを下っていく。

山頂があっという間に遠ざかっていった。充実感満点、手応え十分の飯士山だった。もう飯士山のことは考えなくてもいいかな。

 

つづく