南信の三日目は再び、『信州シルクロード』というテーマで旅していきたいと思います。二月に来信した際に、駒ヶ根シルクミュージアムなどでいろんな情報をゲットした。それを熱が冷めない内に実行に移そうということです。今まで知る由もなかった、蚕神石造物を追いかけて、、、
大宮五十鈴神社の、怪獣じみた狛犬
【2024年3月24日(日)】 駒ヶ根市~伊那市~辰野町
昨日からの雪も雨も止んだ。ホテルの窓からは中央アルプスにまとわりつく雲の流れが望まれた。今日は予定通り前述の通り、蚕神を探し訪ねてゴールの辰野へ向かっていきます。
①秋葉様(駒ヶ根市小町屋)
伊那福岡駅の北、R153沿いの如来寺隣りにある。社殿はなくて、鳥居と祠と石仏のみだ。ここに何があるのでしょうか。
堅牢に造られた木製玉垣が二つ。
右のものには数体の石碑が祀られていて、一番奥に隠れているこれは何だ? どうも蚕神のように思えてならない。家に帰ってからもじっと写真を眺めて考えていたら閃いた。蚕養(さんよう・こがい)神だ。養の字を上下に分割してから左右に並べて彫っている。文政の政の字なども同じ手法で(縦並びで)彫ることがある。
左の祠を覗いてみると女神像が祀られ、秋葉大神と書かれている。しかし資料によると、こだま様(金色姫像)であるらしい。後者が正しいはずだ。
なかなか奥の深い秋葉様だった。
裏手の如来寺の路傍には石仏群があった。
②弘法様(駒ヶ根市飯坂1丁目)
駒ヶ根駅東の琴平町交差点のファミマの東隣接地にある。資料では赤穂琴平町となっている。この石仏は予備知識無しで見たら、何だ?と思うだろう。これが「こだま様」で保食神像である。なお、お大師様は隣りの祠にいらっしゃる。
蚕にまつわる神々も、まあいろんな形で表現されることよ。保食神も大黒天も、視覚的には大差ないような気もしてくる。この神様だって、もう役目を終えたようなものだろう。
隣りには蚕養神とはっきり読める石碑があった。さっきの秋葉様の謎めいたものと同じである。
余談として、駒ヶ根駅の西側中心部は「中央」という町名になっている。まさに中央アルプスを象徴しているみたいだ。駅もすっかりきれいに改修されたようだが、想い出深い駅である。天気が悪くて、クライミングギアをコインロッカーに放り込んで池山尾根に転進したこともあった。家内とわざわざベルグラの張った宝剣岳に登ったことも。
③大宮五十鈴神社(駒ヶ根市赤穂北割一区)
今風のおしゃれなHPのある神社です。昨日の雪の名残もなくて良かった。駒ヶ根の最後は、ここで参拝&探訪していきます。
熱田・伊勢・諏訪というビッグネームを合祀し奉っている。
お出迎えは格式高く、岡崎型。熱田・伊勢とのつながりも頷ける。
まず左手奥の一段上に、目に止まったもの。蠶玉大神であった。これは偶然見つけた。この一基のために境内の一画をあてがわれていた。
次に登場する狛犬は大正8年生まれで、さながら前衛芸術である。型破りと言ったらいいのか。アルプスにもくもくと湧き上がる入道雲の如し。
今日の天気が狛犬を引き立てる。ここだけにパワーが凝集されてるみたいだ。
相方の姿も。
拝殿へ向かいます。
本殿側面は板張りで囲われていて、ほんの2センチの隙間より神殿狛犬をとらえた。人間的な顔で、実に神妙である。
かぶりついて見たいものです。
歩いていて見つけた駒ヶ根市のマンホール。市の花すずらんの周囲に、市の木である赤松の葉を配している。もっと中央アルプスを強調したほうがよかったのではないか。
次にめぐった伊那市で、伊那節というのは馬方に唄い継がれた民謡のこと。山も描かれている。色が着いてたらなおいいのに。
④山本公民館(伊那市西春近小出二区・小出転作促進研修センター)
伊那市ではこの一ヶ所だけ立ち寄っていく。現地から少し坂を上がると右手の広場にPできる。まず入口の路傍に庚申塔・甲子塔が多数並んでいた。字体もいろいろ。
公民館の狭い敷地の片隅に、石造物が並んでいる。明瞭な蠶玉神。
そしてわざわざこの来づらい場所まで訪れた目的はこれ。猫の蚕守護神三体がある。年代は不明か。極めて稀な石造物だ。養蚕農家が最も恐れたのは、蚕の病気とネズミだった。ネズミを駆逐するネコが重宝されて、石造物にまで成り上がった。
しかし端的にネコを彫ったというだけの石造物である。ヒゲまでくっきりと。
推察するに、大正期くらいだろうか。
山本公民館から坂を下っていくと、まだら雪の風景。
⑤荒神山公園・赤羽焼の窯(辰野町樋口)
辰野町の荒神山公園までやってきた。辰野へも何度も来たけれど、今日はダメ押しで未知のエリアを訪ねていく。たつの海とパークホテル。
公園の片隅に赤羽焼窯跡がある。江戸末期に興り、日用雑器などが焼かれていた。明治・大正期になると絹産業の一翼を担って、繰糸鍋(そうしなべ)が生産されたのである。
これが繰糸鍋。繭を煮て、ほぐしながら糸を繰っていく。
いろいろと改良されていった。
登り窯で焼いていたとは知らなかった。
これも一つの絹遺産。
ちょうど9時になったので辰野美術館の扉をくぐった。今日はシルクカードをもらうだけです。
これが生糸商標カード、通称シルクカード。左がここでもらったもので、右は駒ヶ根ファームでもらった。全部で30種類あって、まだ8枚しか集まってない。いろんなデザインが楽しめて、旅の思い出といったところでしょうか。
⑥新町諏訪神社(辰野町新町)
伊那新町駅の西方500mに鎮座する。北上する道の路肩がとても広い。諏訪神社らしい格式ある社殿だが、石仏はどこだ? ぐるぐると探し回った。
社殿左裏手に並んでいた。
こちらが蚕玉大神、女神像である。
とても素朴な感じです。左手にさりげなく繭玉を持っている。お目にかかれてよかった。
⑦宮木公園・諏訪神社(辰野町宮木の辰野公園)
Pには難ありで、諏訪神社の境内がよいかと。石仏は公園の北西端にある。左のあやしい図柄のものは、なんなのでしょうか。
なんと、蚕蛾供養塔であった。上から順に、蚕蛾・繭玉・桑の葉が彫られている。蛾を彫り上げてしまったということに感銘を受ける。昭和27年造立。
⑧平出の山ノ神(辰野町平出)
ここは誰かが作成したGoogleMapの「辰野町の石造物」というページで見つけた。県道50で中央道をくぐったすぐ左手で、乗馬型の美しい蚕神像があるらしい。マレットゴルフ場の斜面を探し回ったが、見つけることができなかった。他の石仏はたくさんあったが。
(幻の蚕神像)
⑨八幡社の蚕玉像(辰野町平出)
ここは上平出コミュニティセンター(P)の北側の、上平出公園という丘の上にある。特に八幡社という神社があるわけではない。遊歩道入口の斜面には石仏がたくさん。
馬頭観音などが斜面にもたれている。
探しながら雪道を登っていくと丘上の広場に出て、奥の木立の中に見えてくる。
光線の加減で見えづらいが、乗馬型の蚕神だった。
蚕神の見つめる先には中央アルプスがあった。あんなに平らなのは将棊頭山から権現づるねの稜線で、奥が伊那前岳だろう。
あと一ヶ所ありますが、一気には語れないので続編で。
つづく