山藤章二さんが亡くなった。

 

1937年生まれ、87歳。

老衰とのこと。

残念だけど仕方ない。

 

山藤さんは僕の似顔絵の師匠のひとり。

彼のような絵を僕は目指してないけど、

参考になることは多い。

壁にぶち当たって、

ニッチもサッチもいかなくなると、

1冊だけ持っている彼の本をひらく。

 

『山藤章二の顔事典』(朝日文庫/1995)

 

帯には、

「戦後50年の大人物・小人物 似顔絵+データ

 1,300人 特別描き下ろし51点」

と記されている。

 

似顔絵は50音順に並べられていて、

最初がプロゴルファーの青木功さん(1942〜)。

最後がポーランド大統領、

「連帯」の議長などを歴任した、

レフ・ワレサさん(1943〜)。

 

そのあとに、

〈誰にでもわかるようにデフォルメを最小限におさえることと、

 どんな記事にも使えるように極端な喜怒哀楽をあらわさない〉

という朝日新聞社の要望とは異なる、

すなわち〈自由な筆致〉による描き下ろし、

「戦後50年人物史」51名が掲載されている。

 

こちらの最初はダグラス・マッカーサー(1880〜1964)。

最後は野茂英雄さん(1968〜)。

 

この本によると1974年に朝日新聞から、

それまで似顔絵を描いていた、

清水崑さん(1912〜74)が亡くなったので、

後を継いでほしいという依頼が、

山藤さんにあったそうだ。

 

前任者が清水崑さんで、

その前が岡本一平さん(1886〜1948)。

 

2人とも名人なので、

〈同じことをやっても勝ち目はない〉。

なので自分流の絵を描くことにして、

依頼に応じたとのこと。

 

つまり用紙、絵具、絵筆を、

前任者と違うものにし、

洋服を黒く塗りつぶすこと、

モデルの「手」を描き加えることにしたのだ。

 

狙いは成功した。

山藤さんは前任者2人に匹敵する、

名人になった。

 

山藤さんの絵で、

僕がいちばん参考にしているのは、

巧みな線描だ。

 

彼は極細の面相筆を使っているようだけど、

モデルの特徴を的確にとらえた、

線描の極致と言っていい表現は、

本当に素晴らしい。

 

1歩でも近づきたいけど、

描いているとき、

僕はどうしても手がブレるので、

山藤さんのような、

安定感のある筆づかいができないのだ。

 

手ブレが起きるのは、

描き手として2流の証拠。

僕は絵を描くために生まれてきた、

人間でないのは明らかだ。

 

僕のような人間が、

絵を描き続けていくとしたら、

2流の枠内で1流を目指すこと。

 

なので僕はブレた線が、

魅力的なテイストになるような、

絵を目指している。

 

そう思って描いていれば、

いつかブレなくなるかも知れない。

 

ま、それは厚かましい願望だけど、

描き続けていれば何が起きるかわからない。

そういう気持ちもあるので、

いくら疲れていても、

毎日描くことにしている。

 

 

「ReHacQ」チャンネルの、

斎藤幸平さんと東出昌大さんの山梨歩き篇を、

昨日に引き続き観た。

 

昨日の久遠寺の、

急勾配の長い石段もすごかったけど、

今日の身延町の西嶋地区の、

集落全体に設置された、

イルミネーションもすごかった。

まさに夢の国。

 

それは良かったけど、

ここまで「ReHacQ」チャンネルを観てきて、

気にることが2つ。

 

 1つは本篇に入る前の、

導入部のダイジェスト的映像の、

尺が長いこと。

 

もう1つはチャンネル開設者の、

高橋弘樹さんがよく登場するけど、

彼の声が耳に心地よくないこと。

 

今のままだとこのチャンネルも、

やがて観なくなるような気がする。