絵を描くとき細い線を引くには、

ダイソーのネイルアート用の極細筆がいい。

という記事を読んだ。

 

名案!

 

たとえばモチーフを描く場合、

よく観察して、

キャンバスなり画用紙なりに、

描きあらわすわけだけど、

観察したとおりに表現できる、

筆その他の道具がないと、

その人の意図する絵ではなくなってしまう。

 

できれば自分に必要と思われるものは、

ぜんぶ買いそろえておいたほうがいい。

 

まず買えるものはすべて買う。

そして試してみる。

すると当然、自分に合う・合わないがわかる。

合うものを「戦力」として常備すればいい。

 

「戦力」が確立した後も、

新たなものに出会えばまた試す。

合格すれば「戦力」が増強される。

あるいは古い「戦力」と入れ替えということになる。

 

あと、細密描写の才能のある少女/少年が、

極細筆を持っていない場合、

その少女/少年は、

その才能をフルに発揮できないわけだし、

まわりの誰も彼女/彼に、

そんな才能があると気づくこともないのだ。

 

そしてその状態のまま月日は流れ、

その素晴らしい才能は埋もれたまま、

その少女/少年は年老いてしまう。

 

そういう悲しいことも起きる。

 

 

筆の思い出。

 

僕は大学の入試課題に水彩画があったので、

最初それ用の筆を、

太いのと細いのと2本そろえていた。

 

細いといっても、

細密表現ができるほど細くはない。

しかしあまりに細かい描写は、

求められてなかったので、

その筆で充分だった。

 

ところが細い筆も太い筆も、

理想的かというと、

ぜんぜん違っていた。

 

2本の筆はどちらも国産品。

何の毛だったか忘れたけど、

しなやかさが足りなくて、

描きにくかったのだ。

 

そこで僕は、

東京の予備校の講習会を受けに行った、

友人にお願いして、

広島では売ってない、

フランス製の太い筆を買ってきてもらった。

 

たしか8,000円くらいだったと思う。

ハイライトが80円だったから、

100箱分。

僕には高すぎもいいところ。

 

しかし、予備校の先生が、

道具をケチってはいけない、

といつも言っていたので、

その筆を買うことに迷いはなかった。

 

すると投資した甲斐はあった。

その筆はテンの毛で、

国産品とは比べものにならなかった。

 

細部もしっかりと描けたので、

受験生の間じゅう、

僕はほぼその筆1本で水彩画を描いた。

 

僕が描いていたのは、

水彩画といっても透明水彩画。

 

僕は色が濁らないようにするのに苦労した。

もちろん透明水彩画も、

いろんな描きかたがあるわけだけど、

タッチを重ねて描写するケースが多い。

 

そのとき1度塗ったところに塗りかさねると、

絵具が水を含んでいるので、

どうしてもその水が、

最初に塗った絵具を溶かしてしまうのだ。

 

すると色が混ざって濁ることになる。

なのでなるべく重ねる回数を減らす。

それが鉄則。

 

せいぜい2度か3度にとどめないと、

小汚くてニブイ絵になってしまう。

 

しかしその鉄則を守るのがタイヘン。

2度か3度で描写するには、

仕上がりのイメージが明確でないといけない。

 

そしてそのイメージどおりに描くには、

どういう色をどう重ねればいいか、

描く前に整理できてないといけない。

 

それから気持ちに迷いがあると、

その迷いが絵に出てしまうので、

画面に筆を下ろすときは、

思いきりがよくないといけない。

 

僕の絵がよく色が濁ったのは、

突き詰めて言えば、

僕の頭が悪いからだ。

 

どういう色をどう重ねれば、

という「読み」がうまくできなくて、

間違った色を塗ってしまい、

修正のために余計な手を加えることになり、

結果、美しくない絵に、

しばしばなってしまったのだ。

 

 

僕は自分の愚かさにずっとウンザリしていた。

しかしどうすることもできない。

 

高2の秋に美大受験生になって、

2浪で合格するまで、

僕は暗い暗い青春を過ごした。