『地球の歩き方』の「広島版」が発売された、
というニュース動画を観た。
映像で観るかぎり、
宮島の鳥居のイラストを大きく扱った表紙は、
インパクトがあるし温かみのある配色。
中ページは可愛らしさがあって垢抜けている。
デザインセンスの良い素敵な本、
という印象を受ける。
広島のタウン誌が制作に協力したそうだから、
情報的にも問題ないはず。
500ページ、2,200円。
価格もほどよい。
広島に関係ある人なら1冊ほしくなるのでは。
もう広島に行くことはないし、
今その気はないけど、
僕ももっと若ければ迷わず買ったと思う。
いま手もとに、
『地球の歩き方』が2冊ある。
『ヨーロッパ版‘85〜‘86』
(ダイヤモンド社/800ページ/1,680円)
『アメリカ版‘87〜’88』
(同/700ページ/同)
前者にはとくにお世話になった。
初めての海外ひとり旅。
まさにバイブルだった。
海外旅行にまつわる、
全体的な説明のページと、
訪れたスペインとフランスの、
ページだけを残し、
あとは千切り捨てて軽くし、
ずっと持ち歩いた。
今も当時の約250ページのままの姿。
千切られた約550ページの痕が、
今も生なましい。
お世話になったのは本だけではない。
旅行自体がダイヤモンド社の企画だった。
いろんなものにいくつか選択肢があって、
僕は着発は、マドリード着、
パリ発で帰国するコースを選んだ。
1986年厳冬期。
期間は1ヶ月。
マドリードの到着日と、
パリの出発前日の、
ホテルだけ予約されていて、
あとはフリーだった。
料金は17〜18万くらいだったと思うけど、
ハッキリとは覚えていない。
出発前に「ユーレイルパス」も買った。
そちらは3週間用で、
7万くらいだった気がする。
旅行前にダイヤモンド社が開いた、
説明会にも行った。
初ひとり旅なので、
もうほんと、不安だったけど、
説明を聞いて少し自信がついた。
その旅のことは、
前にあれやこれや書いているので、
もう書く気はしないけど、
ちょっとだけ書くとすれば、
目的はマドリードのプラド美術館、
トレドのエル・グレコの家、
バルセロナのアントニオ・ガウディの作品群、
パリのルーブル美術館、
最寄駅ポントルソンのモン・サン=ミシェル、
を見ることだった。
今なら違う旅をすると思うけど、
当時、僕は紛れもない、
美術の世界の住人だったのだ。
収穫をひとつだけ挙げれば、
パリのノートルダム寺院の、
荘厳な内部空間と、
バラ窓の美しさに圧倒されたこと。
礼拝者用のベンチに腰掛けていると、
異世界というか、
天国にいるような感覚になった。
あの不思議な感覚は、
そのとき以外、生じたことはない。
その偉大な空間に、
何度も身を置きたいと思った僕は、
2週間のパリ滞在中、
朝昼夕と時間帯を変えて、
計9回、足を運んだ。
『アメリカ版』は、1987年夏に、
カリフォルニアに行ったときに携行した。
こちらはどのページも千切り捨ててはいない。
「ロスアンゼルス」
「ヨセミテ国立公園」
「タホ湖」
その3つのページに付箋が貼ってあるけど、
「タホ湖」だけは、
時間がなくて行けなかった。
ま、何にせよ、『地球の歩き方』のおかげで、
僕は人生でいちばんの旅をすることができた。
感謝してもしきれない。