今日の言葉。

 

〈時折りですが、我が家にある沢山の本を眺めていると、

 読み尽くすことができずに死を迎えるだろう

 という気がします〉

 

今日から再読し始めた、

『詩という仕事について』(鼓直訳)

の中のボルヘスの言葉。

 

これはよくわかる。

本好きでそれなりに蔵書がある人なら、

たいていそういう気がするのでは。

 

内田樹さんも大学を定年退職し、

自宅兼道場を建てたばかりのころ、

本があふれかえる書斎で、

似たようなことを語っていた。

 

僕の場合、蔵書は、

こないだも書いたように、

スチール製の簡素な事務用書棚5架が、

ちょうど埋まるくらいしかないけど、

それでも未読の本をすべて読み終えるのは、

毎日朝から晩まで読み続けても、

1年や2年では無理だと思う。

 

ボルヘスはその言葉に続けて、

次のように述べている。

 

〈しかし、それでも私は、新しい本を買うという誘惑に

 勝てません。本屋に入って、趣味の1つーー例えば、

 古英語もしくは古代スカンジナビア語の詩ーー

 に関わりのある本を見つけると、私は自分に

 言い聞かせます。「残念! あの本を買うわけには

 いかんぞ。すでに1冊、家にあるからな」

 

本屋で魅力的な本を見つければ、

書いたくなるのは当然だろう。

蔵書がいくらあろうが関係ない。

 

僕はすでに持っている本を、

もう1冊ほしくなることはないので、

最後のセリフは、

ジョークとしては評価したいけど、

そのように言い聞かせたくなる、

気持ちはわからない。

 

ただおなじ本でも、

ヘンリー・ミラーの『南回帰線』を、

新潮文庫(大久保康雄訳/1969)と、

講談社文芸文庫(河野一郎訳/2001)の、

2冊持っているように、

訳者が違ったりすると、

のちに出版されたものも欲しくなる。

 

本つながりで、

『サミング・アップ』(行方昭夫訳)

のモームの言葉も引用する。

 

〈1冊読み終わると、次の本を直ぐに読みたくて

 堪らなかったのだ。これはいつでも胸躍る経験だった〉

 

この言葉を読んで、

立原道造がどこかに書いていた、

「良い本を読んだあとは、

 何も言うな、何も書くな」

という意味の言葉を思い出した。

 

僕は若いときにその言葉を、

知ったからかどうかわからないけど、

良い本を読み終えると、

しばらくその世界に浸っていたくなる。

モームのように、すぐに次の本、

という気持ちにはならない。

 

ちなみにその言葉の出典を確認したくて、

書棚を隅々まで見てみたのだけど、

立原道造の本は1冊もなかった。

 

いつかどこかで処分したのだろうけど、

そのときの心境は今は理解できない。

 

ま、でも、残念なことではあるけど、

そういうとき、自分の手の届かない、

大きな力が働いている、

と僕は考える。

そして素直にその力にしたがう。

 

 

レジーナの新監督に、

今年2月からレジーナアカデミーの、

アドバイザーを務めている、

吉田恵さんの就任が決まった。

 

新監督は、他のJ1チームのヘッドコーチを、

昨季いっぱいで辞めて、

なぜかレジーナのマイナーな役職に就いた、

彼が本命ではと、

早くからネットでは噂されていたけど、

そのとおりになった。

 

もちろん僕もサンフレッチェの組織内からだと、

彼の可能性が高いと思っていたけど、

外部からの招聘もありそうな気がしていた。

 

いずれにしても、いま思うと、

レジーナ次期監督として、

彼を迎え入れたのだろうから、

去年の暮れ、あるいは秋くらいには、

「政権交代」が決まっていたのは確かだろう。

 

当然のことと思うけど、

だからといって容易に話が進むとは限らない。

強化部の「決定力」を評価したい。

 

僕は吉田恵さんのことは何も知らない。

ただ写真に写った精悍な顔立ちを眺めていると、

「テッペン」を獲ってくれるのでは、

という期待感がしだいに湧き起こってくる。