昨日の、古本の匂いのする、

『マルテの手記』は新潮文庫。

 

新潮文庫の表紙をデザインしたのは、

山名文夫(やまな・あやお/1897〜1980)。

 

赤黒の2色刷りだったころ、

これほど心安らぐグラフィックデザインも、

なかなかないと思いながら、

よく眺めていた。

 

僕のその『マルテの手記』も、

1990年の刊行ということでまだ2色刷り。

 

いまも眺めている。

さりげなさが素晴らしい。

 

未熟な人がデザインすると、

技術不足や「力み」的なものが表れて、

わざとらしい、

デザインしました!

という感じの作品になりがち。

 

さりげなくて良質な作品は、

容易には作れない。

むしろ「神」の手になる、

と言ってもいいくらい。

 

山名文夫の他の作品も、

初めてまとめて見てみたけど、

その表紙とおなじように、

神業と言えるものがいくつもある。

 

これまでとくに気にしたことはなかったけど、

恐るべきデザイナーだと思った。

 

 

僕の持っている新潮文庫を調べると、

表紙の文字や罫線やブドウの絵の色を、

赤黒2色から緑1色にいつ変えたのか、

ある程度は絞れるはずだけど、

正確な時期を僕は知らない。

 

とにかく赤黒が素晴らしかっただけに、

すごく残念に思う。

 

経費節減なのかも知れないけど、

新潮社は大事な宝をドブに捨てた、

と言っていい。

 

というか有名デザイナーの名作を、

新潮社が勝手にイジるなんて許せない。

契約上、問題ないにしても。

 

 

今日は用があって出かけたので、

『薔薇の沈黙ーリルケ論の試みー』

を少し読んだだけ。

他に何もできなかった。

 

しかし、こないだも書いたけど、

『リルケ 人と思想161』の、

学者2人の文章とくらべると、

辻邦生作品はやはり断然読みやすい。

 

今日も僕の嫌いな「かかる〜」が1度出てきたけど、

あとは苦痛を感じないで読めた。

 

辻邦生の文章はさりげない。

2人の学者の文章は技術不足や力みがある。

もちろんそう言って差し支えない。

 

 

今日の言葉。

 

〈芸術家にとって必要なのは、

 作品を産み出すことであり、

 それを可能にする創造母体を

 成熟させることのみである。

 そしてそれは沈黙のなかでしか

 行われない〉

 (『薔薇の沈黙ーリルケ論の試みー』)

 

これはまあ月並みではあるけど、

「今日の言葉」企画をしばらく実行してないので、

今日読んだところから選ぶとしたらこれかな、

と思って今日の言葉としてみた。

 

僕のアンテナが反応したのは、

〈創造母体を成熟させ〉たいと、

最近というか、このブログを始めてからずっと、

願い続けているからだと思う。

 

 

サンフレッチェの昨日の京都戦の「INSIDE」を観た。

最近は勝つとプレミア公開にするケースが多いけど、

今回もまたそうなった。

 

それはいいのだけど、

開始時刻がいつも21:00。

そのあたりの時間帯は、

その日のブログをどういう内容にするか、

たいてい思い悩んでいる。

僕としてはもっと早い時刻にしてほしい。

 

それはさておき、今回印象的だったのは、

5度のゴールシーンが、

いずれも見事だったこと。

 

とくにゴールラインぎりぎりで、

ゴールマウスに背中を向けた状態でボールを拾い、

近くにいた味方にパスすることなく、

すぐさま体を反転させて、

シュートを決めた新井直人選手に、

グラウンダーのクロスを送った、

ピエロス選手のプレーが素晴らしかった。

 

結果的に5-0の圧勝となったけど、

2点目をもたらした、

外国人選手ならではと言ってもいいそのプレーが、

勝利を決定づけた。

 

プロ初のハットトリックを決めた、

新井選手よりもピエロス選手に、

僕ならMVPを贈りたい。