『ウォールデン 森の生活』上下巻
( ヘンリー・D・ソロー/今泉吉晴訳/小学館文庫/2016)
を読み始めたのは3月初め。
それから約2ヶ月。
下巻の2/3まで読みすすんで、
残り100ページちょっと。
上巻の初めのほうに、
近くの丘から撮影した、
ウォールデン池(Walden Pond)の、
写真が載っている。
ソローはその池のほとりで、
2年2ヶ月の時を過ごした。
じつに雄大な風景。
池を取り囲む森が地平まで続いている。
そしてその果てに、
関東平野の果てに聳える、
筑波山のようなおもむきの、
ワチューセット山(Wachusett Mtn./2006ft=611m)。
ちなみにその山は、本ではなぜか、
〈ワチューセッツ山/2108ft〉
となっている。
それはともかく、
その写真を目にしたとき、
これはすぐにもGoogleEarthで、
確認しなければと思った。
ところが何となく先送りし続けて、
結局今日になってしまった。
こういうことは人生でよくあった。
読書が典型例。
早く読まなければ、と思っていても、
いつのまにか1年、2年・・・
ならまだいいほうで、
10年、20年が過ぎていってしまう。
僕は大学時代に、
ドストエフスキーのおもな作品を、
すべて読むつもりでいた。
ところが肝心の、
『罪と罰』『カラマーゾフの兄弟』
を後まわしにしたために、
どちらの本も買っただけになってしまい、
前者は40代になってから、
後者はその10年後に、
ようやく読む機会を得た。
偉い人はそういう愚かなことは、
しないんだと思う。
僕の場合はもっととんでもないことも、
平気でしている。
気づくと反省はするけど、
似たようなことをまたしてしまう。
ずっと愚か者でありたくなかったけど、
70年生きても偉くは成れなかった。
GoogleEarthで、
ウォールデン池の上空からの、
「360度写真」を見てみた。
素晴らしい!
本の小さな白黒写真なんて比較にならない。
どこまでも続く広い大地。
深い森。
麗しい池。
大都会ボストンから30キロのところに広がる、
光景とはとても思えない。
僕の故郷の広島は平地が少ない。
そして平地には、
樹木が生い茂った広いスペースはない。
ほとんどの樹木は山に生えている。
なので僕はウォールデン池周辺のような、
平地の巨大な森は、
ずっと見たことがなかったし、
広島を離れてあちこちに住み、
旅行もしたけど、
いまだに見たことがない。
中を歩かなくてもいいので、
間近でその森を見てみたいと思った。
もはや無理な願いだけど。
僕はボストンも訪れたことがない。
90年代の終わりに、
半月ほど海外旅行に行ける機会が得られた。
そのとき、未知の大都会に行ってみようと思った。
それまで僕はパリ、ローマ、マドリード、
ニューヨーク、LA、サンフランシスコ、
といった街はいちおう知っていた。
候補地として思い浮かんだのは、
シカゴとロンドン。
そして、一見の価値があるのは、
やはり後者だろうということで、
ロンドンとソールズベリーに行ってきた。
ソールズベリーは近くにある、
ストーンヘンジが見たかったから。
そのとき、ボストンが思い浮かんでいたら、
話が違っていたかも知れない。
その後の僕の人生も、
違ったものになっていたかも知れない。
地図を見て考えていたら、
当然候補になっていたはずだけど、
そのときなぜか見る気にならなかったし、
漠然と思いを巡らせていると、
シカゴとロンドンに絞られたのだ。
村上春樹さんは、
『夢を見るために毎朝僕は目覚めるのです』
(文藝春秋/2010)
に収録されているインタビュー(2004)の中で、
最も好きな街のひとつにボストンを挙げている。
それを知ったとき、
次はボストン! と思ったけど、
結局ボストンとは縁がなかった。