スーパーの帰りに、
隣の食品店を覗くと、
リンゴの「紅玉」を売っていた。
1個100円+税。
今季初めて見かけた。
夏はニュージーランドの「ジャズ」、
冬は「紅玉」に目がない僕としては、
スルーなんてあり得ない。
5つカゴに入れてレジに持って行く。
すると30年ほど前は、
カワイイ女子高生だったに違いない、
という気がしなくもないお姉さま、
受け取った商品をポリ袋に詰めながら、
紅玉について説明し始めた。
このリンゴは青森産で酸味があって・・・
わかってます。
と言ったのだけど、
マスク越し、
レジを取り囲む透明プラ板越し、
のせいもあってか、
聴こえなかったようで、
説明は続いた。
そこでもう1度、
わかってます、
子供の頃からずっと食べてきたので。
と大きな声で言うと、
今度は聴こえたようで、
彼女は口を閉じた。
子供の頃、このリンゴしかなかったんですよ。
僕は黙った彼女に向かって、
わざと嘘を付け加えた。
ほんとうは「インド」という名前の、
僕の家では「インドリンゴ」と呼んでいた、
紅玉とは対照的な甘口のリンゴもよく食べたけど、
ひとつに絞ったほうが、
いちいち説明しようとする彼女に、
僕が「わかっている」ことが、
よく伝わるはずと咄嗟に思ったからだ。
僕はそういう計算をすることがある。
悪意はないけど、
今これを書きながら、
その「クセ」がすごく不快に感じられたので、
これからは、やめようと思った。
やっぱり「バカ正直」でありたい。
それはさておき、
僕の嘘に彼女は反応しなかった。
2まわりは年上の僕の子供時代に、
どんな種類のリンゴが売られていたのか、
そして僕がどこで子供時代を過ごしたのか、
彼女はわからないわけだし、
それで返事に困ったのかも知れないけど、
客商売をするのなら、
というか、あえてリンゴの説明をして、
客と「接近」しようとするのなら、
そこは機転をきかせて、
何か返事をしたほうがいいのでは、
という気もした。
返事をしてくれたら、
他の種類のリンゴもあったような気がします、
みたいなことを言って、
「正直路線」に変更したと思う。
ま、でも、返事に窮するときは誰にだってある。
彼女を嫌なヤツ、と思ったわけではない。
帰宅して紅玉について調べてみた。
するといろんな知識を授かった。
子供の頃、たしかに「国光(こっこう)」、
というリンゴがあった。
ずっと忘れていた。
紅玉と国光は100年にわたって、
日本のリンゴ産業を支えてきた、
と某サイトに説明されている。
しかし両方ともルーツはアメリカで、
明治になって北海道開拓使が、
日本に持ってきたとのこと。
インドリンゴのほうは、
名前と違って弘前生まれの、
初の日本産の品種とある。
あと、国光とインドは、
もうほとんで作られてないけど、
紅玉は調理用・加工用で需要があって、
最近はむしろ増産されているとのこと。
そのおこぼれが普通の食用として、
店頭に並ぶのだろうけど、
何にしても1個100円くらいで、
入手できる時期があるのは、
僕には嬉しいことだ。
しかし、せっかく好物の紅玉を買ったのに、
帰宅すると、先にスーパーで買った、
やはり好物の柿のほうを食べたくなって、
紅玉は明日にまわすことにした。
数日ぶりにスーパーに行ったので、
僕的には今日の夕食はリッチだった。
【夕食】
・干し芋
・目玉焼き(卵+チリメン)
・柿
・バナナ
・トマト
・金時豆
・ナス漬物
・ミックスナッツ