また写真を載せよう。
犬吠埼。
撮影したのは2019/8/20。
ちょうど4年前。
時刻は午後5時頃。
今日72歳の誕生日の僕は、
その日68歳を迎えた。
その日は午後、
銚子近郊の得意先に出かけた。
仕事は夕方早く終わる。
誕生日だし直帰するのは面白くない。
どこかに寄ってから帰ろうと思った。
鹿島神宮? 香取神宮?
なんかちがう。
結局、犬吠埼に行くことにした。
その日はずっと天気が好かった。
しかし犬吠埼に近づくにつれ、
暗雲が空を覆いはじめる。
着いてみると、東の洋上の、
わずかな部分だけが明るく、
いつ雨が降り出してもおかしくない、
不穏な空模様になっていた。
その日はたまたま立ち寄ったけど、
考えてみれば、名古屋から千葉に、
引っ越してきたのが2000年春。
その年の誕生日も犬吠埼を訪れている。
その後、誕生日は、
思い出づくりじゃないけど、
どこかに出かけたくなって、
日帰りであちこちに赴くようになった。
2019年は胃がんの手術をして、
抗がん剤治療をした年だ。
手術は5月。
治療は6月から始まった。
その日は治療期間の真っ只中だったけど、
寄り道して帰るだけの元気があった。
しかし僕の胃がんは、長い名前の、
何万人に1人という特殊なもので、
進行・転移しやすいことはわかっているけど、
まだ正体が突きとめられていない、
と聞かされていた。
しかも僕の腫瘍は、
直径10cmまで発達していたし、
リンパ節にも転移していた。
なのでその頃、
僕はもう長くないなと思っていて、
その日の日記には、
最後の誕生日かも知れない、
と書いている。
誕生日のお出かけは、
2000年の犬吠埼に始まり、
2019年の犬吠埼で終わり。
ちょうど20年。
区切りもいい。
暗い海を眺めながら、
たまたま犬吠埼に来たけど、
そういうことなんだな、
つまり今日は結果的に、
いちばん望ましい選択をしたんだな、
と思った。
灯台わきの駐車場から車を出すと、
急に大粒の雨が降り始め、
たちまち雷鳴がとどろく豪雨に。
最初来たときは雲ひとつない快晴。
最後は豪雨。
誕生日のお出かけ「物語」は、
うまく演出されている!
とも思った。
ところが僕の予想に反して、
その日が最後の誕生日には、
ならなかったわけだけど、
その物語はその年で終わらせた。
足の痺れがヒドくて歩きにくいのは関係ない。
結末に至ったと感じた物語のページを、
あらためて開きたくはない。
過ぎ去った「季節」は
ひたすら遠ざかって行けばいい。
ということで今日も「お出かけ」はしなかった。
他に特別なことをしたい気持ちにもならない。
「強度のある1日に!」
「目指せ詩的文体、そして詩人!」
「目指せベラスケス!」
スローガンは変わっていない。
いま、もうひとつ言葉を引用したくなったけど、
長くなりそうなので明日にしよう。