両脚のシビレがいっこうに良くならない。

抗がん剤治療が終わったのが一昨年の7月。

以来両脚とも膝から下がシビレている。

 

なのでできれば出歩きたくない。

散歩したほうがいいのは自明だけど、

「外出」の2文字が頭をかすめるだけで、

気が重くなる。

 

しかし今日は土曜日。

毎日新聞の「今週の本棚」を、

覗いてみたくて買いに出かけた。

 

ついでに干し芋も買ってくる。

夕食の主食にした。

 

メニューを書いておこう。

・干し芋

・タマネギ炒め

・納豆+しそ昆布

・大根サラダ

・バナナ

 

「今週の本棚」にひとつ気になった本があった。

鈴木成一さんが毎回、

魅力的な装丁の本を採り上げている、

「COVER DESIGN」というコーナーの今週の1冊。

 

『絵画の素』

 (岡崎乾二郎/岩波書店/2022/¥5,500)

 

装丁にひとこと言いたいわけではない。

この本を読みたくなったのだ。

しかし岡崎さんの本はいつも高額。

とても手が出ない。

 

前作の『感覚のエデン』(亜紀書房/2021/¥3,960)も、

おなじ理由で見送った。

 

岡崎さんの本はすごく勉強になる。

たとえばこういうところ。

 

セザンヌの有名な絵、「赤いベストの少年」に描かれた、

〈異様な耳の大きさ〉〈異様な手の長さ〉について専門家に、

〈いくら説明されても、やはりセザンヌの絵はあい変わらず、

 やはり、これでいいのだ、と了解しきれない異様さが残る。

 それが面白いわけですね。つまりセザンヌのなかに常識や

 通常の感覚には回収しきれないような部分、徴候がある〉

 (『絵画の準備を!』松浦寿夫+岡崎乾二郎/朝日出版社/2005)

 

岡崎さんの本をじっくり読みたい気持ちは大いにある。

『絵画の準備を!』にしても腰を据えて再読したい。

 

しかし彼の本は美術書。

僕の読書の基本線は文学書。

残り少ない人生で、

ヘビーな美術書に時間を割くのはむずかしい。

2冊続けて見送ったのはそれも大きな理由。

というより、それが1番の理由と言ったほうがいいだろう。

 

手もとには数ページ読んだだけの、

『ルネサンス 経験の条件』(筑摩書房/2001)

もある。

こちらももう読めないと思う。

 

その本が発売されてすぐの頃、

岡崎さんもキレキレのトークを披露した、

紀伊國屋ホールでのシンポジウムで、

浅田彰さんが満員の聴衆に向かって言ったひとことを、

いまも覚えている。

 

「みんなの中でこの本が理解できるのは、

 たぶん1人か2人」

 

そう言われると僕は尻込みしてしまう。

世の中には僕など足もとにも及ばない、

頭のいい人がたくさんいる。

それは僕の母校の中高一貫校で思い知ったことだけど、

そういう賢い人にしかわからない本なのだろう、

とどうしても思ってしまう。

 

『ルネサンス 経験の条件』は、

その思いのために放置し続けたのかも知れない。

 

 

脚のシビレは読書には関係ない。

いま、とにかく体力がないのだ。

元気いっぱいで読み始めても、

すぐに集中力が切れてしまう。

 

だから基本線に沿って、

細ぼそと読み続けるしかない。

 

『パリの手記』も理屈っぽい、

集中力が足りないと飲み込めない記述が多いので、

1日に読める量は限られている。

 

ま、でも、いつも言ってるけど、

それも運命。

嘆いてもしょうがない。

真摯に向き合うしかない。