お絵描きアプリ、ApplePencil、

どちらが悪いのか、

あるいは双方なのかわからないけど、

アプリを再インストールしたのに、

相変わらず「細い・太い」の2通りの線しか引けない。

 

これはもう神様が、

「これからおまえはその2通りの線で描くこと。

筆圧を自在に使いわける本格派路線を突き進んで、

あわよくばベラスケスの背中が見えるところまでたどり着こうだなんて、

いくらなんでも厚かましすぎる!」

と言っているのかと思ったりもしたけど、

とりあえずメーカーにメールで問い合わせるという、

最終手段に訴えることにした。

 

返事は近日中に来ると思うけど、

それまで手を休めたくないので、

今日も「細い線」だけで描いてみた。

 

やはり線の太さが変えられないと面白くない。

気持ちとしては、引き続きベラスケス師匠の後を追いかけたい。

 

 

モデルを佐藤優さんにしたのは、

今日、彼が前立腺癌になったことを、

公表したという記事が目に留まり、驚いたからだ。

 

また1人、癌仲間が増えたわけだけど、

佐藤優さんは1960年生まれの61歳。

若すぎる。

若い仲間は欲しくない。

 

というかこの国最高の知識人のひとり。

もっともっと生きてもらわないと困る。

 

今日のニュースによると、

佐藤さんは末期腎不全でもあるとのこと。

最新の医学を信じて楽観してていいのか、

僕にはわからない。

 

佐藤さんのことは、

あのふくよかすぎる体型を目にするたびに、

もう少し瘦せたほうがいいのではと思っていたけど、

まさか大変な病気になっていたとは。

 

佐藤さんの著書をたくさん読んでいるわけではないけど、

僕が最も読みごたえを感じたのは次の2冊。

 

『紳士協定〜私のイギリス物語』(新潮社/2012)

『獄中記』(岩波現代文庫/2009)

 

『紳士協定』は帯の背の部分に、

「甘く苦い/青春の終り」と記されているけど、

人生のせつなさが心に染みる作品。

 

いまも、久しぶりに取り出してきて、

佐藤さんが語学研修でホームステイした、

ストッケンチャーチという村の家の、

12歳の少年とはじめて会ったシーンを読み返していて、

2人の何気ないやりとりに胸が熱くなった。

 

好きな音楽を繰り返し聴きたくなるように、

この本も何度も読みたくなる。

 

『獄中記』には、いま数えてみると17枚の付箋が貼ってある。

本文が約470ページだから27〜28ページに1枚の割合。

それだけ知的刺激を受けたということ。

 

1つだけわかりやすい箇所を引用しよう。

 

〈逮捕されたり、新聞やテレビで不正確な報道がなされても、

特段のショックも受けず、「そんなものだろう」と受け流しているのも、

私にはそもそも名誉心が希薄だからと思います。ソ連の崩壊、

ロシアの動乱を身をもって体験すると名誉などというものが

いかにいい加減で意味のない価値であるかということがわかるからです。〉

(2002.11.4)

 

僕は佐藤優さんと癌仲間になったわけだけど、

自分のことに関して言えば、

楽観も悲観もしていない。

現代医学の世界の中で生きている、あるいは生かされている、

という認識だけがある。

 

僕の癌はその世界に収まりきってないので、

いつ何時、現代医学で対処できない事態に陥るかわからない。

 

そうなったらそうなったで構わない。

希望も絶望もない。