ユヴァル・ノア・ハラリ著『21 Lessons〜21世紀の人類のための21の思考〜』
(河出書房新社2019年発行/柴田裕之訳)をようやく読了した。
日記を見てみると、7/17にヨドバシから届き、
翌日から読み始めている。
他の本への寄り道もあって、断続的に読み継いできたが、
今年の夏は、ずっとこの本に関わっていたという印象がある。
というより、去年『サピエンス全史』を読み、
今年は『ホモ・デウス』、そしてこの本と、
過酷な癌治療で、本など読む気もしなかった時期を除き、
ここしばらく、ハラリ氏とともに生きてきた、
と言っても過言ではない。
3冊読み終えて思うのは、
この先、IT&バイオ革命が人類に及ぼす影響は計り知れず、
この生命体が根本的に変わることになるとしたら、
叶わぬ願いではあるが、
明らかに変わりはじめた、あるいは変わってのちの世界を覗いてみたい、
ということである。
現在の人間が、似て非なる生き物に変容する。
そしてそれは、遠い未来の話ではない。
こんな興味深いことが、ほかにあるだろうか。
『21 Lessons』で注目したくだりを3つ。
1つめはチェスの話。
2017年にGoogle系のコンピュータープログラム「アルファゼロ」が、
コンピューターチェス選手権の前年チャンピオン、
「ストックフィッシュ8」を打ち負かした。
「アルファゼロ」は、最新の機械学習原理を用いて、
まったく無知な状態からわずか4時間で、
チェスというゲームを独学でマスターし、
圧倒的なチェスの知識を持ち、局面の計算も文句なしに秀でている、
「ストックフィッシュ8」を28勝72引分と圧倒したのである。
コンピューターのトメドない可能性を、あらためて感じる。
2つめは、やがて〈旧来の広告業界は壊滅する〉という話。
コンピューターがわれわれ以上にわれわれを知ることになると、
買い物の際も、つねにわれわれに最適のものを選んでくれるようになり、
広告は無意味になるという話だが、たしかにそのとおりだろう。
3つめは、大学でいくら勉強しても、
〈本当の見識はほとんど得られなかった〉著者が、
瞑想の指導を受けることによって、
〈(自分の)心を制御するのがほぼ不可能〉であること、
〈自分の苦しみの最も深い源泉は自分自身の心のパターンにある〉ことに、
気づいたという話。
〈私と世界との間にはつねに体の感覚があ〉り、
〈私は外の世界の出来事〉ではなく、
〈いつも自分の体の感覚に反応している〉。
怒りも苦しみも〈私自身の心によって生み出された精神的反応〉であり、
〈瞑想は現実からの逃避ではない。現実と接触する行為だ〉。
これまで、瞑想について、ろくに考えたことがなかったのだが、
俄然興味が湧いた。
さてこれで、3部作をすべて読み終えた。
これだけ刺激的な著作を、
1度読んだだけで書棚に眠らせるのは賢明とは言えない。
他の本と並行して、もう一度『サピエンス全史』から読んでみるとするか。