フランス政府観光局が、
職場放棄のような対応をしてくれたおかげで、
パリの画材店にまつわるディープな情報は得ることができなかった。
なので、『地球の歩き方』に載っていた、
2つの店舗にしか行かなかったのだが、
どちらかで、買って帰りたいと思う商品を1つ発見した。
それは画用紙や木炭紙をはさむカルトン。
当時自分が使ってもいて、知ってもいたのは、
表も裏も灰色の、国産の地味なタイプだけ。
しかしパリのは、両面とも落ち着いたピンクで、
しかもプリントされた抽象的な柄が、
なんともオシャレだった。
とはいえ、衝動買いはしなかった。
というより、できなかった。
買うとしたら木炭紙判の大きなサイズがいいし、
となると、機内持ち込みは出来ないし、
成田に着いてみたら、ひん曲がっていた、
なんてことも十分にあり得る話。
結局、面相筆を数本だけにした。
画材店は、バルセロナでも1軒だけ立ち寄った。
ピカソ美術館からホテルに帰る途中にあった小さな店で、
見すぼらしさが二の足を踏ませたが、
話の種に、いちおう入ってみた。
すると運よく、いちばん上の陳列棚に話の種があった。
そこには石膏像が各種並べてあったのだが、
どれひとつとして、日本で見たこともない像だったのである。
それには驚いた。
ちなみに石膏像はパリの画材店でも見ているはずだが、
そちらの記憶は飛んでしまっている。
その旅行に出る前に、
先にスペインにもフランスにも旅行している大学の同級生に、
奥方製の究極のパエリアをご馳走になりつつ、
いくつか情報を授かった。
で、お礼にお土産を、と思ったのだが、
そのとき自分が持参したカバンは、
普通に街で使うようなサイズのショルダーバッグのみ。
お土産の大きさや重さには限度があった。
だから、知恵を絞らないわけにいかなかったが、
カサ・ミラからサグラダ・ファミリアに通じる道沿いに、
香辛料を売っている店を見つけ、サフランを買った。
店の前に差し掛かったとき、サフランなら少量で済むし軽いし、
これだ、と即、決めた。
片手いっぱいに掬ったくらいの量で約1,000円。
日本なら1ケタ違ったはず。
しかし、サフランだけだと愛想ナシなので、
パリに行ってから、マドレーヌ寺院の傍のフォションで、
日本でもおなじみのアップルティーを1缶買った。
そちらの値段は覚えていない。
当時日本なら、高いところでも1,000円しなかった気がする。
あと、オマケとして、フォーラム・デ・アールで見つけた、
5センチ角くらいのホログラムのシートも、何枚か買った。
自分はそのとき初めてその手のものを見たのだが、
同級生はすでに知っていて、手渡すと、
あ、これ、六本木のWAVEで売ってるよ、
と言って、パリより安い価格を口にした。
お土産を持って行ったときは、パエリアではなかったが、
これまた絶品というほかない手料理でもてなされた。
よその家で、しかも行くたびに、
あれだけ美味しい食事にありつけた記憶はない。
その同級生とは、もう30年以上会っていない。
とくに会いたいとも思わないが、
あの絶品の手料理だけは、もう一度食べたいとたまに思う。