80年代の半ば、ベジタリアンに成り立ての頃、

バルセロナに行った。

 

当時、ブラリと海外に出かける人たちにとって、

『地球の歩き方』がいちばんの情報源。

その旅行でパリにも行く予定だったので、

事前に、東京にあった、正式なフランス観光局みたいなところに、

パリの画材屋を教えてもらいたいと、

郵便か電話で問い合わせた。

 

何日か経って、調べがついたという連絡が入り、東京まで出向いた。

すると、スタッフが手渡してくれたのは、

何と『地球の歩き方』のページのコピー。

あ、ありがとうございます、としか言えなかった。

 

その『地球の歩き方』に、1軒だけ、

バルセロナの自然食レストランが紹介されていた。

場所はカタルーニャ広場に近い、ランブラス通りの裏手。

1等地といっていい。

 

昼食時に訪ねてみると、

こぢんまりとしたレストラン。

外装も内装も素朴な造りで、

料理はすべてバイキング形式だった。

 

パンと飲み物と、おかずを2皿か3皿ピックアップ。

興味津々で口に運んだが、

いずれも、美味しいと言えるレベルではなかった。

 

もしかしたら、自分が選んだ料理が、

たまたま不味かったのかも知れない。

そういう気もしたので、翌日もう一度足を運んでみた。

結果はおなじだった。

 

バルセロナには6泊したが、

3度目のチャレンジをする気は起きなかった。

 

『地球の歩き方』に載っていたレストランで、

もう1軒だけ、パエリアが評判という店に行ってみた。

場所はおなじく、ランブラス通りを少し入ったところ。

もっと港に近い地区。

 

そのレストランのパエリアは日本人の口に合うとのことで、

利用者の絶賛コメントも掲載されていて、

だから赴いたわけであるが、

期待して注文してみると、

独特の香りがする香辛料がキツすぎて、とても喉を通らなかった。

 

結局、半分ほど頑張って食べたのだが、大失敗もいいところ。

本などに頼らないで、気の向くままに店を選んだほうが納得がいく、

とあらためて思った。

 

バルセロナでは、あとひとつ、

やはりランブラス通りの近くにある、

バルでビールを飲んだときのことを覚えている。

そちらの店は、エビやイカの揚げ物が美味しかった。

 

そういえば、もう1軒、カタルーニャ広場に面した、

デパートの上階のレストランにも行ったことがあるが、

それはそれとして、大昔のこととはいえ、

6泊もしたわりには、他に食事の記憶がない。

新米のベジタリアンは、どこで何を食べたのだろう。

思い出せない。

 

その頃、横浜はたまプラーザに住んでいて、

たまに東京に出かけた。

当時東京でも自然食レストランは少なかった。

自分が知らなかっただけかもだが、

こだわっていた玄米が食べられず、

空腹をかかえて帰宅したこともある。

 

玄米は美味しいので、いまも食べ続けている。

白米は握り鮨かコンビニのおにぎりで食べるくらい。

 

去年、癌になって、胃を切除したので、

お粥を卒業したあとは白米にしようと、とりあえず5キロ買った。

フライパンでの白米の炊きかたもYouTubeで勉強した。

しかし、どうしても炊く気になれず、

その5キロ袋も結局封を切らずに、

本を買い取りに来た古書店の青年にあげてしまった。

 

玄米で、腸に負担をかけすぎて、

ヤバいことになるかも知れない。

だとしても、それはしょうがない。

それが、わが人生。