クリヤーブックを整理していると、

高校の修学旅行で買った、2枚の絵葉書が出てきた。

 

1枚は「舟遊び」と題された、

貴婦人2人がボートに乗って楽しむさまを俯瞰したモネの油絵。

もう1枚はブールデルのペンと水彩による、

片足を膝くらいの高さの台に乗せ、上体を前に傾けた裸婦を、

斜め後ろから捉えたエスキース。

ともに、みずみずしい作品だ。

 

それらの絵葉書を買ったのは西洋美術館だが、

ちょうどそのとき、ブールデルの展覧会が開かれていたのに、

さらに、その庭にはロダンの「考える人」もあるのに、

彫刻作品ではなく、その2枚の絵画の絵葉書を買ったということは、

当時もいまも変わらぬ、自分の好みゆえと思われる。

 

学園紛争のさなか、約450名の学年全員の出席が求められた、

学生集会が頻繁に行われた。

学生集会があると、授業は中止になった。

代替授業などは設けられなかった。

高校2年生の68年は、1度中間テストも中止になったし、

授業日数がずいぶんと少なかった。

 

学校のあり方が問題視されるなか、

修学旅行は予定通り夏休みに実行された。

 

ルートは生徒全員にアンケートをとって決められた。

学校側は、学年主任の先生の強い意向で、

富士登山の1点を組み込んでくれれば、

あとは口出ししないと宣言した。

 

結果、富士急ハイランド泊の富士登山ー軽井沢ー東京、

というルートに決まった。

自分も、軽井沢は覚えていないが、東京には1票入れた。

当時の田舎学生にとって東京は、

唯一無二の憧れの地だった。

 

上野公園は最後の目的地だった。

動物園と美術館の2択で、

美術館を選んだ生徒は、当然少数派だった。

 

美術館でのことは、何も覚えていない。

美大を目指すことを決めたのはまだ数ヶ月先で、

天下の西洋美術館にやって来たのに、

もうひとつ身が入らなかったのかも知れない。

旅行の疲れが溜まっていたのかも知れない。

 

そのせいで、上記2枚の絵葉書を買ったのかも知れない。

みずみずしい作品は好みだが、

結局のところこの歳まで、モネにもブールデルにも、

強く心を打たれたことはないのである。

自分との相性という意味で、トップランクの人たちではないのだ。

 

西洋美術館へは、その後何度も足を運んだが、

ここへ来て、しばらくご無沙汰している。

 

前回訪れたときの写真。

ブールデル「弓をひくヘラクレス」

2014年1月25日撮影