昨日も書いたように、
知的好奇心を充たすことの楽しさを遅まきながら知って、
自分の人生は変わった。
もっとも、その楽しさを、
酒を飲む楽しさがしばしば上回ったので、
わが学問の道は、
よけいイバラの道になってしまったのだけれども。
それはさておき、食に関して自分の人生を変えたのは、
1冊の本である。
丸元淑生著『丸元淑生のシステム料理学〜男と女のクッキング8章〜』
(文春文庫1982年刊)
どういう経緯でこの本を入手することになったのか、
まったく記憶にないが、
自分が持っているのは、1983年7月刊の第7刷である。
とにかく、美味しくて、栄養も豊富な食事を日々摂るために、
システムを確立する、という考えにつよく惹かれた。
もちろん本に書いてあるすべてを受け入れたわけではないが、
そば粉のパンケーキをつくってみたり、
安くて美味しいチリメンジャコやタラコを求めて、
築地の場外に出向いたり、
銀座のナイルレストランにギーを買いに行ったりした。
そば粉のパンケーキはしばらくつくってないが、
チリメン・タラコは、つねにと言っていいほど、
いまも冷蔵庫の一角を占めている。
ギーに関しては、数年前に、
なぜか一般用の700グラム缶が発売中止になったので、
最近は自分でつくることにしている。
少々値は張るが、簡単につくれるし、
何より美味さの点で、他の追随を許さない。
しかし、癌になってしまったので、
食について自分は大きなことは言えない。
言えるのは、丸元氏のこの著書が、
自分のその後の食生活に多大な影響を与えた、
ということだけである。