文章を書いていると、
たまに不安になることがある。
つまり、文章を書くということに関して、
自分は誰にも習ったことがないので、
作文の基礎がわかってなくて、
どこかおかしな文章を書いているのでは、
多くの書き手が自明のこととして了解していることを、
知らないがゆえの笑止千万なミスを、
平気で繰り返しているのでは、
という心配が、たまに湧いてくるのである。
不安な気持ちになるのは、
美術に関しては、そちら系の大学受験予備校に通い、
1から基礎をたたき込まれたからである。
だから、自分が美術作品をつくる際は、何はさておき、
基本的な約束事だけは、まず忘れることはないし、
うっかり忘れても、あとでいくらでも修正することができる。
しかし、文章はそんなふうにはいかない。
何かの機会に、芸能人の美術愛好家の作品を観ると、
グラフィティ・アートのような、
基礎力のほとんど必要のない仕事は別にして、
人物・風景・静物、いずれにおいても、
基礎をしっかりと踏まえた表現に、まずお目にかかることはなく、
美術作品を作品として成立させる最低限の知識を持ち合わせてないのに、
よく発表できるものだと、いつも呆気にとられるわけだが、
そういった際も、自分も文章において、
同様の恥ずかしい表現をしているのではないかと、
不安が頭をもたげるのである。
もちろん、いくら心配しても、
その場で何とかなるものではないので、
とりあえず自分流でいくしかないと開き直るしかないのだが、
いつまで経っても、不安は完全にはぬぐい去れないのである。
昔、「週刊朝日」で「私の文章修業」という連載があって、
毎回、売文業界の錚々たる著名人が文章を学んだ経緯を披露していたが、
調べてみると、本になっていて古本なら入手可能。
連載時は、ここに登場する著名人は、
みんな自身を文章の達人と思っているのだろうなと、
なかば見くだしつつ読み流していたが、
いまあらためて読み直してみてもいいのかも知れない。