イギリス話のついでにソールズベリーについても、
ひとつ書いておくとしようか。
ソールズベリーに1泊旅行をしたのは、
ストーンヘンジを1度この目で見たかったから。
だから、テムズ川右岸ウォータールー駅始発の電車を、
ソールズベリー駅で下りると、
ホテル探しのあと、昼飯時だったにもかかわらず、
迷わず駅に舞い戻って、ストーンヘンジ行き2階建てバスに乗った。
ストーンヘンジはとにかく寒かった。
周囲に何もない、広々とした大地を、
曇り空のもと、真冬の寒風が休むことなく吹き荒れ、
いちおうその巨石サークルを目の当たりにするという、
当初の願いは叶ったのだったが、
とにかく身体があっという間に冷え切ってしまい、
おかげで長く滞在できず、
特別な空間の特別な雰囲気を、
存分に体感することはできなかったのである。
しかし、マイナスもあればプラスもある。
ソールズベリーに戻って街を徘徊していると、
不意に大聖堂が目の前に立ちあらわれ、
たちどころにその建物全体の気高さと、
周囲の静謐な空間に魅せられてしまったのである。
その大聖堂をコンスタブルが描いたことを思いだすと、
さらに気持ちは高ぶった。
もうひとつ、いいことがあった。
翌朝、ホテルの近くを散歩していると、
朝霧に覆われたエイヴォン川のほとりに出た。
その、まさに幻想的な風景は、
圧巻としか言いようのない素晴らしさだった。
しかし、しばらく眺めていると、
エイヴォン川も前日の大聖堂もあまりに素晴らしすぎて、
ソールズベリーの街を離れたくなくなった。
地球の裏側の国に帰らなければならない自分が、
とても哀れに思えてきた。