もともと車というものに関心はなかった。

子供の頃、当然ながら車社会ではなかったし、

父親が免許を持ってなくて、

自宅にも車はなかったし、

車は自分とは別次元の存在だった。

車を運転してみたいという欲求も、

ただの1度も湧くことはなかった。

 

免許を取ったのは29歳のとき。

車に興味が湧いたからではなく、

そのとき失職していたわけではないが、

このさき仕事を探すときに、

免許を持っていたほうが当然有利なわけだし、

いちおう取っておこうかという軽い気持ちで、

当時自宅からいちばん近かった、

今はなき北鎌の自動車学校に通うことにしたのだった。

 

免許を取って、中古のダイハツ・シャレードを買った。

以来、去年まで、スバル・レックス、トヨタ・ヴィッツ、

ニッサン・ラフェスタ、さらにラフェスタと乗り継いで、

約40年、途切れることはなかった。

 

自家用車を持つまで、とくに不便な生活とは思わなかったが、

持ってみると、当然ながら大変便利で、

車のない生活なんて、考えられなかった。

 

しかし昨年末、ついに車と別れる日がやってきた。

最後に乗っていたラフェスタは会社の車だったのだが、

退職することになって、返却したのである。

 

車のない生活になって、3ヶ月が過ぎた。

丘陵地ゆえに自転車も使えない。

しかし、もう慣れた。

多少の不便は感じるが、とりたてて問題はない。

 

自分の場合、家族も家もないのだが、

このたび車もなくなって、

さらには本も服もたくさん処分して

(服は旧職場の若いベトナム人たちにあげた)、

ずいぶんと身軽になった。

 

いま、とてもすがすがしい気分。

やはり、こうでなくちゃ、と心から思う。

もっともっと身軽にしたい。