大連ダンスホールの夜 | 山中伊知郎の書評ブログ

大連ダンスホールの夜

 昭和、戦前の「満州」といえば、陰謀渦巻くというか、虚々実々というか、もうなんか、スパイだとテロリストだの大陸浪人だのが入り乱れて暗躍するイメージがあって、ミステリアスで魅力的。まあ、満洲に渡ったほとんどの日本人は、そんなのとは関係なく、農地を切り開いてたりしたんだろうけど。

 その満洲の玄関口にあたる大連をめぐる、いくつかの逸話を綴ったのがこの本。阿片を最もたくさん扱った阿片王、東洋のマタハリ・川島芳子、関東軍の隠された謀略、甘粕正彦や、原敬を暗殺した中岡艮一、ダンスホールをめぐる某殺人事件など、まあ、盛りだくさん。著者がかつて大連に住んでいたのも、リアリティの味付けを増す。

 決して自分が住みたいとは思わないが、映画や本で、あの当時の「満洲もの」を見たり読んだりするのは、ノスタルジックでもあり、心地よい。