黄金のビザンティン帝国 | 山中伊知郎の書評ブログ

黄金のビザンティン帝国

 


  昔、半年ほどアジアをブラブラしていて、そのうち一カ月以上、イスタンブールにいた。目的なんてなくて、一日の半分以上はただ安宿で寝てただけなのだが、それでも近くにあったアヤ・ソフィアやトプカピ宮殿には何度か行った。

  だからどうもイスタンブールには軽い親近感がある。それでその前身であるコンスタンティノープルを首都にしたビザンティン帝国の本を年に一冊か二冊ずつ読む。

 この本も、それで読んだのだが、どうも著者が外国人らしく、翻訳調っぽい文章がうまくハマれなくて、頭に入ってこない。

 

 ただ一点だけ、妙に頭に残った登場人物がいた。それはシメオン・ロゴテテスという人。ビザンティン政府の高官だった彼は、過去のあらゆる聖人伝を書き直し、具体的なエピソードや逸話をみんなカットして、型にはまった百科事典のような文章に書き替えてしまったとか。またそれが好評を博し、それ以前にあった、生き生きとした聖人伝の多くが失われてしまったらしい。そのため、彼のあだ名は「筆削家」だったとか。

 どの時代にもいるんだろうな、こういうタイプ。すべてを以前から定番とされている型にハメ込み、それ以外の存在を許さないタイプ。

 本人は、そういう作業に幸せを感じていたのか、少し気になった。ま、迷いはなかったんだろうな。