安心して絶望できる人生 | 山中伊知郎の書評ブログ

安心して絶望できる人生

安心して絶望できる人生 (生活人新書)/日本放送出版協会
¥価格不明
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 これはなかなかなタイトルだな、とまずそこに目がいって図書館で借りてしまった。

 北海道・浦河にある「べてるの家」という統合失調症などの人たちが暮らす共同体の話。
10年前くらいに出た本だが、全国的にも有名なところらしい。

 簡単に言えば、自分の病気を自分で研究する「当事者研究」を行うことで、抱えている病気
と出来るだけ「共存」していこう、としているわけで、幻聴、人格障害、周囲のみんなが自分の心の中を見透かしていると思い込む「サトラレ」など、いろんな症状の人の「当事者研究」が
紹介されている。
 その活動をキッカケに、自分たちで作ったCDやビデオなどを売るのどの起業を果たした人たちもいるらしい。

 ただ、病気が治ったりはしない。
 ここで行われるのは、「治療」というよりも、病気である自分を受け入れていくこと。「健康な一般人」と同じレベルになるのはあえて諦めて、いわば「絶望」から、自分なりの新しい価値観を構築することのようだ。
 これ、共感できる。
 果たして「健康な一般人」であるのが絶対的な価値をもつものか、私もちょっと疑問をもっているからだ。早い話、それだと身障者の人は最初から「負け組」ってなってしまうわけだし。
 人の一生に「勝ち組」や「負け組」なんてあるはずないと思うし、精神障害は治療して治すのが絶対に正しい道とは思えない。治療のために「薬漬け」になっていく患者もあとを絶たないともいわれている。
 その意味でも、この本の趣旨はスムーズにアタマの中に入ってくる。