すぐそばにある「貧困」 | 山中伊知郎の書評ブログ

すぐそばにある「貧困」

すぐそばにある「貧困」/ポプラ社
¥1,620
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 著者は、ホームレスや生活貧困者の相談支援活動をするNPO法人の理事長。とはいっても
まだ20代。ボランティアで活動を始めているうちに、次第に本格的になっていったという経緯の人らしい。

 だから本の内容も、もっぱらホームレスや生活保護、それに女性や子供の貧困などといったあたりに向かっていく。著者自身が遭遇したさまざまな「貧困者」について紹介しながら、いったいどうしたらこうした貧困問題が生まれるかについても言及している。

 書き方として「貧困者」側に寄り添っているのは、立場上は当然だろう。ただ、いかにも「社会正義」を振りかざしたり、政治が悪いだのと声高に言っていないあたりは好感が持てる。
 このタイプの本て、どうしても「格差社会を推進する自民党政権が悪い」式の、ステロタイプの、プロ市民運動家みたいな方向に流れがちになる。そういう感じではない。
 実際に数多くの「現場」に関わっていればこそだな。

 ただ、じゃあ、この著者のやっているような支援活動を支持できるかとなれば話は別。
 私は、この本の中にもチラッと出てくる、末期がんのくせに、周囲の手助けを拒否するホームレスの気持ちがとてもよくわかる。たとえ体がキツくても、とにかく動ける限りは、どこかの施設に押し込まれたり、束縛されたりはまっぴらごめん。
 困窮者支援には、常に支援する側の「自己満足」の匂いがするのだ。

 やや飛躍するが、こういう本を読むたびに、病院のベットで家族に囲まれながらスパゲッティ状態の末に死ぬのと、路上で1人きりで「野垂れ死に」するのとどっちがいいかを考えてしまう。
もちろん、野垂れ死にの方がいいに決まっている。