裸一貫 | 山中伊知郎の書評ブログ

裸一貫

裸一貫/創出版
¥1,620
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AV男優でプロレスラーもやっていたチョコボール向井が、雑誌『創』に連載していたエッセイをまとめた本。時期としては2004年から2006年あたり。

ちょうど彼がハプニングバーでショーをやり、公然わいせつで逮捕されたり、18歳未満の少女とからんで再逮捕されたり、賑やかな話題満載のころだった。
その上にプロレスラーとして自主興行をやったり、新日本プロレスのリングに登場したりもしている。


まあ、ある意味、「時代の寵児」として脚光を浴びていた時期だったんだろう。


それだけに、読んでいると「自分はAV男優のトップとして業界を引っ張っていかなくてはいけない」との使命感が強い。しっかりした後輩AV男優を育てなければ、と考えたり、秩序のないAV界を改革していかないといけないとか。


実は私も、一度だけこのチョコボール向井を取材したことがあり、彼はしきりに、

「AV男優のトップという自分の立場が、そのまま芸能界とかの他の世界にも横滑りでいけるようになりたい」

 と夢を語っていた。つまり「もっとメジャーになりたい」「もっと市民権を持ちたい」という上昇志向の強いタイプだったのだ。


頑張ってAV男優とAV界のステイタスを上げたい、と真剣に取り組む姿勢はエラい。批判は出来ない。

ただ、ちょっと重たすぎるというか、力み過ぎの感はある。

世の中、AV界に一般社会並みの秩序は求めてないだろうし、AV男優に「良識」を求めたりもしない。見る者をコーフンさせてくれればそれでいいのだ。

楽屋で後輩男優が先輩にちゃんと挨拶できなくても、別にどうってことないのだ。


私は別に「AV男優」という職業を差別する気はない。しかし、「地位向上」みたいなことを考えるなら、それよりもテクニックを磨くとか、Hの見せ方を工夫するとか、そちらの方向に向上心を向けた方がいいのではないか、と思ってしまう。

背伸びしたってしょうがない。自分のいる世界の中でトップなら、それでいいじゃないか。


すでにこの本が出来てから10年。今、この著者がどんなことをしているのかも、少し興味はある。