S・セキルバーグ関暁夫の都市伝説3
世の中、バランスが大事だ。AKB48にしたって、「トップアイドルでありながら、ライブに行けばすぐに会える身近な存在」という絶妙なバランスが成功したから、今の大ブレイクがあるのだろう。
出版の世界で、そうした絶妙なバランスでうまくいった代表は、『関暁夫の都市伝説』シリーズだ、と私は思う。
うまいんだよな、「ほぼ事実であろう話」「事実の可能性もあるが、ちょっとマユツバ臭い話」「完全にマユツバとしか思えない話」が、微妙な配合で混ざり合って、ついついすべてを「なるほどー」と受け入れそうになってしまう。
類似本の多くが「マユツバ」に傾きすぎて興ざめしがちなのと比べて、この「真実」っぽい部分のうまい味付けが、さすが本家なのだ。
『関暁夫の都市伝説3』も、たとえば「フリーメーソン」についての記述で、そのバランスが絶妙に生かされている。その歴史をかたり、東京タワーの近くに日本の支部があるのを語るあたりは完全に「事実」。それがだんだん「マユツバ」度が上がっていき、あげく、野口英世はフリーメーソンとも関連する秘密結社・イルミナティの手下としてウィルス兵器製造にたずさわっていた、とエスカレート。ようやく、ここらで、「そりゃねーだろ」と一段落する。
すると、またまったく別の話題を語り始めて、読者をさらなる「伝説」ワールドに誘い込んでいく。
鮮やか! すでにシリーズ3作目にして、この語り口は完成の域に達した感がある。古典落語みたい。
ただ、付録についていた3Dメガネは、それでグラビア部分を見ても目が疲れるだけで、私ゃさほど感心しなかった。
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