ユダヤ人大富豪の教え | 山中伊知郎の書評ブログ

ユダヤ人大富豪の教え

結局のところ、「成功」って何なんだろう? 

先日も、本来なら就活をガンガンしなきゃいけない専門学校卒業間近の若者と話をしたら、「どうせウカるわけないから、会社は回りません。ボク、人生を成功させようと思ってませんし」とクールに語っていた。

 そう言われると、余計にわからなくなってくる。そもそも私自身、「人生の成功者」とはとても言えない。年収だって、サラリーマンやってる同級生より少ないし、本は何十冊も出したが、ヒットは1つもなかった。だから、世間的に有名にもなれなかった。

 しかし、いかにもミエミエの「こうすれば成功者になれますよ」式のハウツー本を読むと、どうもムカッパラが立ってくる。「うるせー! 成功しなくたって、けっこう楽しく暮らしてるからいいじゃねーか!」と。

 シリーズ累積100万部売れたらしい『ユダヤ人大富豪の教え』も、このムカッパラ組の典型的な一冊だ。

 冒頭、著者がユダヤ人富豪と出会うあたりは、まるで恵果に密教の教えを伝授される空海を思わせる感じで、

実にもったいぶってる。だが、実際に出てくる「幸せな金持ちになるための秘訣」を読むと、「好きなことをやりなさい」「人脈をひろげなさい」「お金の流れを知りなさい」といった、「成功ハウツー本」ならどこにでも書いてあるようなこと。「アラジンの魔法のランプの使い方をマスターしろ」とあったので何なのかと思いきや、要するに目標を設定して、そこに向かって頑張れ、ってこと。

 ただ、こんな内容でも、100万部売れるんだよなァ。つまりそれだけ「成功ハウツー本好き」が存在しているわけで、うまく包装紙の部分を工夫してもっともらしく作れば、中身は月並みでも売れるってことなんだろう。

 そういう意味では勉強になった。

ユダヤ人大富豪の教え 幸せな金持ちになる17の秘訣 (だいわ文庫)/本田 健
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