「EDO COSME 江戸庶民のお化粧事情」のテーマで講演をしました! | 化粧の日本史ブログ by Yamamura

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◆場所は深川江戸資料館。江戸時代の庶民の暮らしを再現した展示があります!

 

こんにちは、山村です!

 

11月26日(日)に、

東京都江東区の深川江戸資料館が開催した、

連続講座「ふかえどカレッジ」で講演をしました。

 

江戸や深川をテーマにした「ふかえどカレッジ」、

今回は「EDO COSME 江戸庶民のお化粧事情」と題して、

江戸の庶民の女性のスキンケアやメイクアップ、

有名化粧品店とそのPR戦術、

そして男性のグルーミングについて話をしました。

 

江戸のコスメといえば19世紀ビックリマーク

 

元禄の頃は、京都や大阪の方が栄えていて、

江戸では化粧品店も多くはなかったのですが、

都市の成熟とともに町人層が豊かになり、

文化文政時代(1804‐30)になると、

江戸でも化粧文化が花開きます。

 

たとえば口紅では、

下唇を緑色に輝かせる「笹色紅」が大流行。

もちろん京都や大阪でも流行していますが、

これほど濃く口紅を塗るのはそれまではなかったことでした。

暮らしが豊かになったからこそできるメイクなのです。

 

当世好物八契(部分) 渓斎英泉 国立国会図書館所蔵

 

有名な紅屋には日本橋にあった

玉屋や柳屋(現在の㈱柳屋)などがありました。

下の絵には、玉屋の店構えが描かれています。

 

文化2年(1805)刊 『玉屋の景物』 国立国会図書館蔵

 

そして、白い肌がなにより大切だった江戸時代、

メイクのかなめは白粉でしたが、

その白粉では、大人気の歌舞伎役者、

瀬川菊之丞の俳名「仙女」を(おそらく無断で)

拝借して名付けた白粉「美艶仙女香」が大ヒットします。

 

販売元の京橋・坂本氏は、

浮世絵や絵草紙などに「美艶仙女香」の広告を

次々と入れ込んで、

現在のメディアミックスのような宣伝をしたのでした。

 

役者当世団扇 松本幸四郎と美艶仙女香 国立国会図書館所蔵

 

白粉の前につける、

「おしろいした(現在の化粧水兼メイクベース)」では、

「江戸の水」がよく知られていました。

 

この「江戸の水」は、

「浮世風呂」「浮世床」などの娯楽小説を書いていた

式亭三馬が、副業として営む薬屋で売り出して

大ヒットした商品ですキラキラ

 

書くだけは食べていけない当時の戯作者が、

副業を持つのはよくあることでした。

 

三馬は、「おしろいのよくのるおかほのくすり 江戸の水」

という名キャッチコピーをつくっています。

 

江戸の買い物ガイドブック 「江戸買物独案内」 文政7年(1824)刊 国立国会図書館所蔵

 

さらには、自分の本の登場人物に、

「江戸の水」がどれほど素晴らしいかを語らせるなど、

メディアをうまく活用する商売上手さも

兼ね備えていたのです。

 

一方で男性のみだしなみですが、

江戸時代の庶民の男性はメイクこそしないものの、

首から上のグルーミングに気を配っていました。

 

当時は月代(さかやき)やヒゲを、

毎日剃るのがおしゃれな男性のみだしなみだったのです。

 

月代をそり髷を結うために、

庶民の男性たちが通ったのが髪結床でした。

髪結床は、男性たちの社交場でもありました。

 

下の絵は、髪結床で誤って髷を切り落としてしまった場面。

カミソリを持っているのが髪結い

利き手が右なので、右側の棚に櫛やハサミを置いていますビックリマーク

 

こうした浮世絵は、

江戸時代の化粧について教えてくれる

貴重なテキストなのです。

 

安政7年(1860)「江戸名所道戯尽 四十五 赤坂の景」 東京都立図書館蔵

 

講演場所だった深川江戸資料館は、

火の見やぐら、八百屋に米屋、船宿、

そして庶民が暮らす長屋など、

江戸時代の深川の町の暮らしを再現した資料館。

 

半蔵門線「清澄白河駅」駅から徒歩3分。

近くには清澄公園もあります。

興味のある方は、下記の公式HPをご覧ください。

 

 

次回は12月16日頃更新予定。