今話題の脱毛。でも、どこを脱毛するかは国によって違うのです! | 化粧の日本史ブログ by Yamamura

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◆日本では昔から、顔や首のうぶ毛を剃るのはあたりまえでした!

 

こんにちは、山村です!

今回のテーマは脱毛について。

 

2月17日にNHKの「首都圏情報 ネタドリ!」

「広がる“無毛社会”!? 私たちと毛のこれから」

という特集が放映されました。

 

内容は近年市場が拡大している

「脱毛」サービスについて。

 

美容のための脱毛だけだなく、

老後の介護に備えてのVIO脱毛や、

毛深さに悩んでいる子供の脱毛など、

脱毛市場は広がっています。

 

その一方で、最近では広告などで、

なかば強迫的に脱毛を勧誘する風潮が

あるのも事実で、

グルーミング商品のメーカー、シックでは

「ムダ毛」という言葉を使うのをやめるなど、

体毛があることがコンプレックスにならない

表現を模索しています。

 

そんな脱毛のプラスの面、マイナスの面の

両方をとりあげる良い番組でした。

 

脱毛については、日本と欧米でかなり意識が違います。

 

もう20年以上前になりますが、

私がフランス人の女性ジャーナリスト数人に

顔のうぶ毛剃りについて聞いてみたところ、

「カミソリで顔の毛を剃るなんてとんでもない」

と全否定されました。

 

今でも欧米では、顔のうぶ毛を剃る人は少ないそうです。

 

それに対して、日本ではうぶ毛剃りは伝統芸のようなもの。

江戸時代の浮世絵にもよく描かれています。

 

日本においては、女性は子どもができると

眉を剃り落とす習慣があったので、

剃刀で肌を剃ることへの抵抗感はなかったのです。

 

また、日本人は黒髪なので、うぶ毛も黒く、

毛深いと目立つのも、毛を剃った理由のひとつと思われます。

 

下の浮世絵は、安政6年(1859)の

「忠臣蔵絵兄弟 九段目」(国立国会図書館所蔵)
 

 

娘が母親に、剃刀で首の後ろのムダ毛を

剃ってもらったところです。

江戸時代には、白粉のノリをよくするために、

白粉をつける顔や首筋のうぶ毛を剃っていましたビックリマーク

 

この浮世絵では、剃刀を手にした母親は

眉がなくお歯黒をつけています。髪は丸髷。

つまり子どもがいる既婚女性。

 

網代(あじろ)模様の着物を着て、

黒と紫の昼夜帯を立て結びにしています。

中年らしい地味な装いです。

 

一方、座っている娘は未婚女性が結う島田髷です。

房飾りのついた牡丹の花簪(はなかんざし)と

べっ甲の簪、それに朱塗りの櫛も華やかで、

お金のある商家の娘と母親といったところでしょう。

 

ちなみに娘の着物と帯は麻の葉文様。

櫛の文様はよく見ると千鳥で、

襦袢の半襟も千鳥文様のようですね。

 

本題に戻ると、うぶ毛については日本が剃り、

欧米が剃らないのが普通ですが、

その一方で、欧米の女性は、

VIOの脱毛を昔からやっていました。

 

日本では近年までVIO脱毛は

あまり知られていませんでしたが、

「介護される時に脱毛していた方が処理が楽」

とエステ業界などがアピールするようになり、

それまで縁がなかった女性も、

興味を持つようになりました。

 

ただ、これについては、

「歳をとるにつれ、

自然とVIOの毛も薄くなるので必要ない」

「VIOの毛も肌を保護するのに役立っている」

などの意見もあり、どちらが正しいということではないのです。

 

 

いずれにしても、

完全に脱毛すると、もう生えてこなくなるので、

「脱毛するのがエチケット」

などの文言に惑わされず、

自分がどうしたいのか、よく考えて決める

ことが、一番大切なのだと思います。

 

次回は3月3日頃更新予定。