男性の化粧 ⑦ 大正から戦前。「紳士」から「男子」へ。男性専用スキンケアを出すメーカーも! | 化粧の日本史ブログ by Yamamura

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◆女性との兼用だけでなく、男性用スキンケアも既にありました!

 

こんにちは、山村です!

 

国産の洋風化粧品が増えていく明治末期から、

女性用として売り出されたスキンケア商品を、

男女兼用として、男性にも勧める広告が、

ちらほら見られるようになりました音譜

 

前回は、平尾賛平商店の

レート化粧水をとりあげましたが、

桃谷順天館の「にきび取り美顔水」も、

明治末期に、「未来の紳士に告ぐ」という広告を、

新聞に出稿しています。

 

未来の紳士とは、男子学生のことビックリマーク

そこには、

「にきび取り美顔水を常用して、

容貌の美を発揮して交際場裡に立て!」

という文章が爆  笑

 

現代風に意訳すと、

「にきび取り美顔水を使ってイケメンになり、

交際の場に立て!」

でしょうかあせる

 

大正時代になると、

上流階級を連想させる「紳士」ではなく、

ターゲットをより広げた「男子」という言葉を

使った広告が増えたように思います。

 

今回も、花王石鹸をとりあげました。

下の広告は、大正2年に、男子に向けて、

花王石鹸を洗髪用に訴求しています。

この場合の男子とは、男の子でなく男性です。

 

(大正2年6月11日 読売新聞より)

 

いわく、

「花王石鹸は、婦人が用いて

髪の澤(つや)や質をよくする程あって、

男子の方で毎日髪を洗う様な方には、

最も適当です

 

石鹸は、からだを清潔にする商品!!

男女兼用はあたりまえなのですが、

品質の良さを切り口に、

男女の洗髪用にもおススメしているのがポイントです。

 

大正4年4月に発売された、

平尾賛平商店の「レートフード」は、

「ほんのり色白くなる化粧液」として、

女性に大人気でしたが、

同じ年に、「男子の美容料」といううたい文句の、

新聞広告も出ています。

 

もうひとつ、例をあげましょう。

以前のブログで、美白化粧品として紹介した、

矢野芳香園の「美乳」キラキラ

 

 

大正7年の新聞広告ですが、

こちらも「不思議の美白乳剤」

というキャッチコピーに加え、
「婦人も男子も大高評」と書かれていますドキドキ

 

(大正7年5月28日 東京朝日新聞より)

 

下段の商品説明部分をアップにしました。

 

 

見出しは「近代紳士は皆美乳党」ビックリマーク

肌を少し白く美しく見せる効果だけでなく、

アフターシェーブローション的な使い方や、

外出時の香水的な使い方が紹介されています。

 

中産階級が増えていった大正時代に、

髭剃り後などの使用を見込んで、

スキンケア商品を男性にも訴求したのは、

市場拡大を狙った化粧品会社の

戦略だったと考えられます。

 

大正末期から戦前にかけては、

男性専用のスキンケア商品を発売する

メーカーもありました!!

 

たとえば、

先進的な洋風化粧品を次々発売した資生堂キラキラ

男性専用化粧品として、大正15年(1926)に

「アフターシェーブローション」、

昭和9年(1934)に「ゼンツクリーム」、

昭和11年には「男子用ホルモリン」

を発売しています。

 

ゼンツは“GENT’S”というスペル。

英語の“Gentleman”(紳士)を略したネーミング

と思われます。

 

他社も出しているところはあるでしょうが、

あまり注目されなかったのか、

戦前は、男性化粧品の発売ラッシュには

至りませんでしたニコニコ

 

次回から、戦後の男性化粧品の変遷について。

6月4日頃更新予定。