◆「ラジウム液」、「美乳」。驚きの化粧品のネーミングでした!
こんにちは、山村です。
今回は大正時代の化粧品広告のなかから、
ちょっとあやしい美白化粧品を
2つとりあげます
まずは「美白化粧料 ラヂウム液」
(大正4年(1915)の『東京朝日新聞』より)
「恐るべき秋の日やけと肌のあれを防ぎ、
自然に白く美しくする
ラヂウム入りの化粧料」とあります。
誰もが気になるのは、
なぜラジウム入りなのかという点でしょうが、
それには理由がありました。
科学史をひもといてみると、
キュリー夫妻がラジウムを発見したのが
明治31年(1898)。
以降、日本でもラジウムの研究が進みます。
大正時代になると、ラジウムは
さまざまな病気に効果があるといわれ、
世の中にラジウム温泉(放射能泉)ブーム
が起きました
温泉ではラジウムの効果を案内書に書くようになり、
東京では大正2年、京橋に総合娯楽施設ともいえる
「ラヂウム楽養館(ラジウムパーラー)」がつくられ、
ラジウム温泉、ラジウム吸入、美顔術、
西洋料理、バー、
などのサービスを提供していたようです
「美白化粧料 ラヂウム液」は、
世間に流行していたラジウムブームを、化
粧品にすばやくとりこんだ商品だったのです。
当時考えられていた、
ラジウムの万能薬的な効能で、
美白もばっちり、というところでしょうか
今でもラジウム鉱石入りをうたった化粧品は
販売されていますので、
そうした商品の先駆けでもあったのです。
次にあげるのは、
何を考えてその名前をつけたのかと、
メーカーの人に小一時間問いたい化粧品。
その名も「不思議の美白乳剤 美乳」
(大正7年5月28日の『読売新聞』より)
ちなみに「美乳」はストレートに
「びにゅう」と読みます
もとが横長のため左半分をカットしていますが、
発売元は美乳本舗と
「大学白粉」で知られた有名ブランドの
矢野芳香園。
美乳本舗と矢野芳香園の関係は不明。
「美白乳剤」を略せば「美乳」になるとはいえ、
美乳本舗っていう会社名もいかがなものかと…
キャッチコピーに
「婦人も男子も大高評」とありますが、
そもそも大正時代の男子たるもの、
店頭で女性の店員に「『美乳』ください!」
とは絶対言えなかったと思います。
いや、今でも厳しいでしょう
能書きによると
「新時代の科学の力」で開発された商品で、
毛穴から美白素を吸収し、
皮膚の根本組織を白く美しく艶々しくする
そうです。
だた、先のラジウムのような
具体的な成分は書いてありません。
その代わり、
コピーには「医学博士薬学士合議発明」とあり。
「ラジウム液」もそうですが、
どちらの商品も、
科学の要素や科学者が関わっていることを、
商品のセールスポイントにしている点が、
化粧品会社の研究開発力が向上した
大正時代の化粧品らしいといえるでしょう
次回は、昭和の「美白」化粧品広告をご紹介します。
「美白」化粧品の打ち出し方も、
世相を反映して変わっていくのです
7月5日更新予定。