季節の花と化粧 夏編 ヘチマ 日本の伝統化粧水、夏といえばヘチマ水! | 化粧の日本史ブログ by Yamamura

化粧の日本史ブログ by Yamamura

昔の化粧から今の化粧まで、
化粧と社会、化粧と文化に関する
さまざまな話題をとりあげていきます。









サイト内の文章・写真などの複製、無断転載を禁止します

◆江戸時代には女の園、大奥でも愛用されたのがヘチマ水でした!

 

こんにちは、山村です。


今回ご紹介するのは、

夏に黄色い花が咲くヘチマビックリマーク

 

猛暑の夏をしのぐため、

庭やベランダに蔓性植物を植えて、

エコカーテンをつくるのが流行しています。

ぐんぐん蔓が上に伸びるヘチマは、

エコカーテンに適した植物です。

 

私も、近隣のエコカーテンを探してみたのですが、

黄色い花をつけた植物はキュウリとゴーヤで、

ヘチマはほとんどなし。

 

残念でしたが、考えてみれば、

食べられる野菜を植える方が、

一石二鳥で実用的ですよね。

 

下の写真は、花が小さくて迫力がいまひとつですが、

一応ヘチマの花です。

 

 

ヘチマと化粧といえば、

思い浮かぶのは「ヘチマ水」

 

ヘチマの茎を切って、

したたる液をびんに一晩ためてつくる

「ヘチマ水」は、

江戸時代には、化粧水として、

庶民の間でも使われてきました。

 

実は、この「ヘチマ水」、

庶民だけでなく江戸城大奥でも愛用されたのです。

 

小石川御薬園(現在の小石川植物園の前身)

が記した、文政5年(1822)の

『御製薬差上帳』によれば、

「糸瓜水(しかすい、糸瓜とはヘチマのこと)」を、

大奥に、ひと夏で一石一斗三升

献上したとか…。

 

一石(いっこく)は約180リットル。

一斗(いっと)はその1/10で18リットル。

一升(いっしょう)は1.8Lだから、

×3で5.4リットル。
合計で約203.4リットル

現在の化粧水ボトルを、

200ml入りと想定して換算すると、

1000本ちょっと!!

 

いったい、大奥のどんな女性が

使っていたのでしょうかはてなマーク


文政5年といえば、

11代将軍徳川家斉(いえなり)の治世。

 

家斉は大の女好き。

正妻のほかに、

側室がわかっているだけで16人。

生まれた子供は53人いました。

 

将軍の寵愛を得るために、

側室や奥女中が競ってヘチマ水を

つけたのかも…、と妄想はふくらみます。

 

 

時は過ぎ、徳川の世が終わり、

時代は大正4年(1915)。

ヘチマ水を近代の処方で商品化した

化粧水が発売されました。
その名も「ヘチマコロン」。

 

江戸時代から愛用されたヘチマと、

舶来化粧品のオーデコロンを合わせた

和洋折衷のネーミングです。

 

 

写真は、今でも販売されている

ヘチマコロン。

これは昭和初期のガラスボトルの復刻版。

ヘチマをイメージした、

グリーンのボトルがかわいいですねラブラブ

 

ボトルの上部のガラスには、

ヘチマの葉がエンボスで

浮かび上がっています。

 

今年は2017年なので、ヘチマコロンは、

1世紀以上にわたって女性たちに愛されてきた、

超ロングセラーの化粧水といえるでしょう。

 

最後に株式会社ヘチマコロンの

ウェブサイトをご紹介します。

 

ヘチマ水の採取プロセスが

載っているのですが、

一升びんに無造作に茎を入れる素人のやり方とは、

ずいぶん違っていて、さすがですビックリマーク

http://www.hechima.com/saisuihou.html

 

次回は、太平洋戦争直前の化粧について。
引き続き、ヘチマをとりあげます。

 

8月12日更新予定。