◆江戸時代のシャンプー、ふのりを使った洗髪料のつくり方には謎が多い!
こんにちは、山村です!
今回は、江戸時代の洗髪料を、
ふのり(布海苔)を使ってつくってみました。
江戸時代の美容書
『都風俗化粧伝(みやこふうぞくけわいでん)』には、
洗髪料として、
「ふのり」と「うどん粉」を用いたと書かれています。
その洗髪プロセスとは、
熱い湯につけて溶かしたふのりに、
うどん粉を加え、
この混合物を熱いうちに髪にもみこみ、
熱い湯ですすぎ、さらに水ですすぐというもの。
ふのりは、現代の私たちも食べている海藻。
刺身のツマについている赤紫色のアレです
新潟県発祥のへぎそばのつなぎにも使われ、
ツルツルした食感を出しています。
ただ、『都風俗化粧伝』には、
どんなふのりを使ったか、
ふのりとうどん粉の分量は
どれくらいだったかなどの詳しい説明は、
まったく書いてありません。
そこで、ふのり洗髪をまだやっていた、
明治から昭和前期の雑誌や新聞を
いろいろ調べてみたのですが、
そうすると諸説あることがわかってきました。
たとえば、ふのりを熱い湯で溶かすのではなく、
ぐつぐつ煮出すと書かれた本もあり。
また、熱い湯で洗うのではなく
微温湯がよいとか、
うどん粉は使う場合と使わない場合がある、
などなど…。
明治時代の文豪夏目漱石の『吾輩は猫である』
(明治38年~39年に雑誌連載)にも、
主人公の細君が、天気のよい日に、
ふのりと生卵で、
長い髪を洗っている場面が出てきますが、
これも分量は不明です。
そこで、分量は様子をみて
加減することにして、実験開始
まず、ふのりの種類。
「1枚、2枚」という単位で数えている本があったので、
今回は板ふのりを選択。
赤紫色をした食用の乾燥ふのりは、
板状ではないため使いませんでした。
板ふのりは、ふのりを水洗いし塩を抜き、
板状にして天日に干し漂白した商品。
これに水を加えて煮たものが、
織物の糊に使われてきました。
下の写真が板ふのりです。
このふのりは縦19×横14.5cm。約30g
最初は、ふのり3gと小麦粉2gほど、
熱湯150cc程度で、
『都風俗化粧伝』にある「熱湯で溶かす」
パターンを試してみました。
写真はふのり3gを細かくちぎったものと小麦粉。
右の小麦粉はかなり多めです。
ふのりに熱湯を150cc入れて混ぜましたが、
ふのりはそれほど溶けません。
少し置くとほどほどに溶けて
ドロドロしてきますが、かなり繊維が残りました。
その後、小麦粉を2g入れたところ、
温度が下がっていたためかきれいに溶けず、
しかも粉をそのまま入れたので
ダマダマになってしまいました。
ふのりが溶けたあとで小麦粉投入というやり方は、
いくつかの美容書を参考にしたのですが……。
下の写真はちょっとピンボケになってしまいましたが、
上記のやり方でつくったもので、
まんなかあたりに、
繊維と溶けなかった小麦粉の粒が残っています。
温度が50度になった段階で、
木蝋(もくろう)と菜種油でできた伝統的な整髪料
「すき油」をまぶした毛束を洗ってみたところ、
油分のべたつきが残ってしまいました。
木蝋の融点は50~55度あたり。
あまり熱い湯だと髪を洗えないと思い、
50度に下るまで待ったのは、
失敗だったようです
ちなみに毛束は、ウール100%の
黒い毛糸でつくったもので、
人毛ではありません。
そこで、もう一度、
熱湯で溶かすパターンを試してみました
今度は57℃で毛束を洗います。
小麦粉はほんの少しを水で溶いて入れてみました。
下の写真は毛束を浸した状態。
ふのりの繊維が残っているのがわかりますよね。
やはり、熱湯で溶かす方法では、
ふのりはうまく溶けませんでした。
ふのりが溶けきらず、液が薄かったせいか、
温度は57℃なのですが、
すき油をつけた毛束も前回同様、
べたつきが残ってしましました。
この結果をふまえて、次に、
ふのりの分量を少し増やして、
煮出す方法で試してみました。
念のため、一晩水につけて置いたふのりを
使用します。
続きます!
次回は5月12日更新予定。