心に残る参考書ー寺田の鉄則
山本が大学受験の頃は
数学の勉強=チャート式赤(得意な人),チャート式青(苦手な人)
が一般的でした.
チャート式数学以外では
大学への数学(研文書院)
数学精義(培風館)
解法のテクニック(科学振興社)
鉄則(旺文社)
が大学受験参考書の定番だった記憶があります.
大学への数学は駿台予備校の名物講師3名による著作で,
山本も大学受験の時には
チャートと一緒に併用していました.
解説はかなり厳密な記述が多く,
駿台予備校生か数学マニアしか使わないような雰囲気の本でした.
培風館の数学精義というのは
チャート式とは真反対の参考書で
どちらかというと理系向きで,
論理の流れを優先してあったので,
良書でしたが人気はなかった気がします.
解法のテクニックは
当時Z会の通信添削が流行していて,
そのZ会の会報のなかでお勧めの参考書でもあり,
またチャートや精義よりも洗練された紙面づくりで
読みやすく解説もチャートよりも丁寧でした.
これは東京工大の矢野健太郎先生の名著で
チャートが合わない人はほとんど解法のテクニックを使っていました.
そんな参考書があった中で
旺文社から「寺田の鉄則」という本が出版されます.
寺田先生は当時早稲田大学の教授で
毎週土曜日に代々木ゼミナールでも講座を持っておられました.
「寺田の鉄則」は
チャートの良いところ=解法のポイントをチャートという言葉で整理
を生かしつつ,
精義のような厳密な記述を省きながらも
解法のテクニックよりもわかりやすい解説が魅力で,
発想の仕方を鉄則という言葉でまとめながら
鉄則に従って問題を解いていくという手法が
数学を苦手とする人に受け入れられたのです.
山本が代ゼミに講師として採用された年,
代ゼミの看板講師は
元大学への数学編集長の山本矩一郎(のりいちろう)先生と
早稲田大学教授寺田文行(ぶんこう)先生
に二分されていて,
数学が得意な子は山本矩一郎先生の授業を,
数学が苦手な子は寺田文行先生の授業を取っていたものです.
代々木校の講師室で寺田先生とお話しするようになってから,
実は寺田先生には脳を患ったお子さんがいて,
その子に数学の楽しさを伝えるために
「鉄則」を書きあげたということをお聞きして,
改めて鉄則を読み返したのですが,
寺田先生のさまざまな言葉の配慮が深く心に残りました.
今山本は生徒の皆さんに授業するとき
「解法の原則」という言葉をよく使うのですが
これは寺田先生の「鉄則」に込められた生徒への気持ちと
当時山本が一番好きだった
渡辺次男先生=数学の神様と呼ばれた先生
根岸世雄先生=板書・授業で当時最高峰と言われた駿台の先生
のお二人が
発想について考え方の原則という言葉をよく用いられていたためです.
山本も皆さんと接するとき
皆さんを自分の子供のように接しながら
ひとりひとりに合った解法を選択します.
それは寺田先生の,生徒に対する接し方が根底にあるのだと思います.