【サハラマラソン挑戦記 レース ステージ3 Part1】
2017/04/11/8:30~
31.6km (10H30)

前日に両足にできた水ぶくれが痛く、テントから水をもらったり、トイレに行くときなども歩くたびに激痛が走ります。

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とくに、石を踏んだとき、ちょうど土踏まずの部分にあたるので、「ウッ!」とか「アーッ!」とか声をあげてしまう…。3歩に1度ぐらい、そんな調子で歩いていました。


ステージ3は前日よりも距離は短くなるものの、コース図を見ると山越えが3連発…。しかも実際には、10連発ぐらいのしんどさがあったのです。

とにかく足は慢性的に痛かったのですが、あまり「痛い痛い」と書くのもどうかと思いますので、これからはとくに痛かったときだけ書くようにしますが、「痛くなくなったわけではない!」ということをあえて強調しておきたいです。そのくらいつらかった…。


この日も定番のハッピーバースデーと、前日にリタイヤした人の名前と人数が知らされ、そして『Highway to hell』と同時にスタート。

だんだんみんなの集合する時間が遅くなり、祝う歌声も小さくなっていく。『Highway to hell』のテンションも小さくなっていく、ただひとり主催者のパトリックだけを除いては…。


実は、前日のステージ2の中盤以降、ほどよい早歩きの感覚をつかんで、走ったり休んだりするよりも効率の良いペースを上げれるようになっていました。

そのおかげで筋肉痛は減り、体の負担が少なくなった気がしていて、サハラマラソンの攻略法を見つけた感じがしていたのです。「まだステージ3だけど、これなら完走はできるな」と自信を深めていました。






しかしスタート後、昨日と同じ早歩きで進んでいくと、いきなり山登り…、さらに今回のレース初の山の尾根を移動するパートもありました。山と言っても、日本にあるような山ではなく「砂」と「岩」でできた山です。


頂上に登っても砂というのがとても新鮮で、「これがホントの砂山かっ!」と何かとてもすごい発見をしたかのようなコメントを動画で残しているのですが、こうしたワケのわからないことを言うようになってきたのは、きっとサハラマラソンの力です。






それでも尾根移動は、とても楽しく、みんなが一列に少し渋滞気味に移動していきます。

サハラ砂漠に来て、渋滞に巻き込まれるとは思ってもいなかったので、「なんて都会的なんだ!」と感激していたのですが、どこの世界にも「せっかち?」はいるものです。

僕のちょっと横下をするスルッと通り抜けて行く、ラトビア出身の女性ランナーがいたのです。「そうか、そこを行ってもいいんだ!」と気がつき、僕もせっかちな性分なのでしょう、その女性ランナーに付いていきました。


「トレイルランとは、まさにこんな感じなんだろう」と妙に冷静に考えながら、自分の次の足をどこに置くかを瞬時に判断。そんなふうに走るのは楽く、ドンドンと進んでいきます(と言っても、「ウー」「アーッ!」と声を出しながらの尾根移動でした)。


尾根を抜けると、ようやくCP1です。CP1まで今までで一番疲れずにたどり着けたので、水だけをもらってほとんど休まずに次へと進んでいきました。

そして、また山登り。とにかく、山登り、下り、尾根移動、この繰り返しです。





人間とは勝手なもので、新鮮味がなくなると楽しみも減ってくるように感じましたが、それでも何かのゲームのように瞬時にステップを考えながら進むのは、ただ走るよりも頭を使うので、感覚的にはずっと合っている気がしました。


F1のレースで「どのラインを通ろうか」「どこでブレーキを踏むか」と考えることと、体をコントロールすることが近い感覚だったので、「俺じつはマラソンより トレイルランのほうが好きかも」などと思いながら、CP2までこれまでで一番良いペースでたどりつけました。

「体も調子いい、うん、これならきっと明日のオーバーナイトも問題なさそうだな!」


そんな気の早いことを考えていたので、油断があったのかもしれません。

チェックポイントでもらった水をリュックに背負ったまま、肩にあるウォーターボトルに入れ、蓋を閉めようとしたとき、事件が起きました。

蓋を落としてしまったのです。それを拾おうとした瞬間、ウォーターボトルの水がほとんどこぼれてしまったのです。


「しまった!!!」

貴重な水をこんなことで大量にロスしてしまうなんて…とは思いましたが、ペースも調子も良かったこともあり、
この後、あれほどの地獄を見る羽目になるとは想像もしていませんでした。


<続く>