すごい芝居を見ました。見ながら「ありがとう」という気持ちになったお芝居は初めてでした。


終演後

『すごかったです。あんなに成功した長い独白を見たのも初めてだし、すべてを削ぎ落とした優れた彫刻のような演出は役者への信頼でもあり、カンパニーの勇気の証でもある。一歩間違えば…という恐れを乗り越えた先にある余韻は、とても長いのだと知りました。』

とTwitterに書きました。



〜HPより〜
1967年7月5日、月曜午前10時。
カナダ、モントリオール、裁判長の執務室。
容疑、殺人。

自首してきた若い男娼。
外には大勢のマスコミ。
刑事の取調べは36時間を超えた。

真実だけが、見付からない。

〜引用おわり〜

僕が鑑賞したのは二組あるうちの、田尾下哲さん演出のブラン組。
別組のシアン組とはキャストだけでなく演出家も異なるという意欲的な体制。横浜赤レンガ倉庫1号館3Fホール(この空間も演出ととてもマッチしているように感じられました)と、道具は同じでも、配置も演出もすべて違うそうです。

前半は4人のキャストによる、取り調べ。自首してきた男娼の要領を得ない様子に、観客も一緒に苛つく時間です。最初はこれが続くのかと不安にもなりました。(音楽でもなかなか“解決しない”ことは大事)

ほんの少しのヒントを、生声でいろんな方向を向くキャストの声の中から拾わないといけないので、慣れるまでは集中力が必要でした。

やがて一つ一つキーワードが現れていき、一気に惹き込まれ、いつの間にか終演を迎えていました。

これこそが洗練された演出で
これこそが信頼された役者の矜持で
これこそがリスクをとってそれに正攻法で立ち向かったカンパニーの勇気の勝利で
舞台や芸術を通して、私達が生きている現実の中で、少しだけ神様の国を垣間見られるように思われる所以ではないかと思いました。


キャストも少なく、BGMも、カーテンコールもないお芝居ですが
最後は言葉にするのが勿体無いような、救いがあります。

特に、主演の松田凌さん、本当にすごかったです。僕も、違う分野ではありますが、歌うときにはこうでありたいと思いました。


28日の日曜日までやっているそうです。
横浜赤レンガ倉庫1号館3Fホールにて。

おすすめ!です。



.4.13 Sat. ̶- 28 Sun.

横浜赤レンガ倉庫1号館3Fホール